「最小限の要素で何故これだけの作品に出来るの!? 個々の信仰の深浅や...」奇跡(1954) Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
最小限の要素で何故これだけの作品に出来るの!? 個々の信仰の深浅や...
最小限の要素で何故これだけの作品に出来るの!?
個々の信仰の深浅や宗派を超えて、全体を大きく束ねるのが本作の宗教。
愛をもって問答無用に全体を縛り上げた。
信仰に厚いおっさんたちは、「神は自然法則に則る」と言う。何故なら、彼らは本心のところ神が奇跡を起こせるとは思っていないので、もし「神は自然法則を超える」なんて言えば矛盾が生じるから決して言わない。
信仰集団はときに他宗派の神や祈り方と対立し憎み合うが、何かを予見して言葉を選ぶ卑怯さ、無自覚な計算高さ、生と死の不条理を神の御心のせいにする都合の良さはどの宗派も共通しているようだ。
ところが。
死産の赤ちゃんの切られる音と、聖母マリアのようなインガの死という耐え難い苦しみの先に、奇跡が起きる。
次男とインガの娘の純粋な愛の力の前に、おっさんたちの権威は瓦解する。
映画ならではのフィクションの表現、力強さ、精密さに度肝を抜かれた。
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