「大好きなジーン・ハックマン」カンバセーション…盗聴… 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
大好きなジーン・ハックマン
ジーン・ハックマンの演ずるハリーは、盗聴のプロ、数々の大きな任務をこなしてきた。ミステリー仕立ての、この映画のつかみは抜群で、俊英クリストファー・ノーランなどへの影響が感じられる。
冒頭、少しおびえながら、サンフランシスコのユニオン・スクエアを徘徊するカップルの会話を盗聴しようとするハリー、当時最新の機器を駆使している。そのあと、部屋にこもって、幾つかの音源を注意深く同調させ、彼らが話している内容を明らかにする。ハリーは、会話の内容に興味を示すのではなく、あくまで盗聴のプロとしての仕事をする。
ここで、一つの誤算があり、依頼主の秘書役(若きハリソン・フォード)の非協力により、情報を依頼主に直接渡すことができなかったのだ。しかも、個人生活に触れさせないハリーの姿勢に飽き足らない恋人は姿を消し、彼の部下もライバルの傘下に走ってしまい、焦ったのだろうか、ハリーはミスを冒す。盗聴の見本市の後、同業者たちを仕事部屋に招き入れてしまった。その結果、盗聴内容の流出を招く。
それを背景に、依頼主の周辺で思ってもみない事件が起こり、ハリーもまた、次は自分が標的かと怯えるようになる。
盗聴を内容とはしているが、要は個人情報の取り扱いだろう。当時と今では、情報の伝え方が全く異なる。直接の会話を中心に、電話が多く使われていた当時と、SNSなどを介したスマホなどの通信媒体全盛の今日。その背景にはDx/AI技術があるが、個人情報の保護は極めて大きな問題になっている。企業秘密など、言うまでもないことだ。
この映画は、1974年と言う時期に、それを指摘したことが画期的である。
ただ、多くの映画で、その人間味を感じさせる演技が観ている者の心をとらえることが多いジーン・ハックマンが、ただの神経質な男にみえてしまうところが残念。彼の背景には、キリスト教(カトリック)、愛情(恋人)、音楽(サックスの演奏)がある.。