「重責を負う男達の心理戦」眼下の敵 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
重責を負う男達の心理戦
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秀逸な戦争映画だった。序盤で、敵が迫ってくるまで艦長が登場しないことによって、彼の活躍ぶりに注目がいくようになっており、視聴者の興味を惹きつける。
この映画には大勢の登場人物が登場するが、米軍と独軍の艦長2人にフォーカスしているので、実質2人の話だと言っていい。彼らが人間の体で言う頭ならば、他の兵士達は手足だと言える。一部の仕事だけに専念していれば良い部下達と、自分の判断が全てを決める指揮官とでは、責任の重さがまるで違う。彼らの判断次第で勝敗が決するし部下達の命にも関わる。大勢の人間の命を預かるという重責を負った男達の姿が魅力的に映るし共感を呼ぶ。そんな男達の、緊張感のある心理戦が今作の魅力だと言える。
クライマックスは米軍の戦艦が独軍のUボートを撃沈して終わりなのかと予想していた。だが基本的に全員脱出して助かるというのが一捻りあるし、清々しく感じるのが良かった。しかも、その脱出の過程がごく自然なので、ご都合主義的に感じない点が良い。とにかく敵を殺せば良いというものじゃない。戦闘不能にすれば十分だという判断に、軍人としての誇りを感じさせる。ここは、お互い死力を尽くした上で実力を認めあった男達の熱いシーンだった。
あと、戦争の描写もよくできている。艦長の指揮の様子や爆撃によって起こる水しぶきなどが、実際の戦争もこういうものだったのだろうと思わされる。
文句のつけられない、リアリティの高いよく出来た映画だった。
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