ガルシアの首のレビュー・感想・評価
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ペキンパー
サム・ペキンパーならではのスローモーション映像!人が撃たれたときにスローになるのはわかってたけど、意外なところというか、たいしたことないシーンにも用いられた。
エリータはかつてガルシアの女だったという事実や、捜索隊が来たときの1週間前にガルシアは酒場にやってきていた事実を知らされる。しかも、復縁を迫ったのか別れるためにしょうがなくなのか、2人は最近関係してもいた。それでも愛する情婦。100万ドルの報酬は元締めのためであり、ベニーは1万ドルで“ガルシアの首”を請け負ってしまった。
途中まではベニーとエリータの愛を育むロード・ムービー風といった感じ。楽しいピクニック気分と求婚なんてのは殺伐さを忘れさせてくれるほどだ。そこへ2人の不良ライダーが闖入してきて、エリータをレイプしようとするなど、平和な雰囲気が一気に崩れる。「毎度のことよ」とか言って、諦めて荒くれ者に抱かれようとする心理も痛々しい。隙をみてベニーが2人を銃殺したのだ。そして故郷に到着してからは、ガルシアの家族に嫌われ、別の賞金稼ぎによってエリータが殺される。
首を持ち帰っても、ガルシアの家族たちに殺されそうになり、そこへ元締めの男たちが助っ人に現れ、銃撃戦。そんなこんなで、腐り始めてきたガルシアの首。自宅へ戻り、ドライアイスを詰め、元締めのところへ向うも、エリータを亡くしたことで泣きながら彼らを襲うベニー。そして、いよいよメキシコの大地主の元へ・・・
初孫ができた!と喜ぶ大地主。あれだけ娘の男を憎んでいたのに、生まれてくる子供にゃ罪はないもんな。しかし、当の娘はベニーに「彼を殺して」とつぶやき、あっけなく大地主をも銃殺する。ガルシアのために16人もが死んだんだ!などと、金持ちの道楽を非難するストーリーもいい。なんとなく残念なのは、ベニーの設定が軍隊経験者であり、最初から銃を扱うのが上手かったし、道中無差別に鶏を撃って楽しんだのはいただけない。徐々に人間としての感覚を失っていくようなものがあればさらに良し。
ペキンパー流男の美学
しがない酒場のピアノ弾きベニーが、懸賞首の話しを小耳に挟み、情婦エリータとの幸せを掴むため、一攫千金をはかる。
墓を掘り起こして首を持っていこうとするベニーの行動はほめられたものじゃないが、監督は負け犬なりの意地を自分に重ね合わせたのでしょう。
バイオレンス映画の巨匠と、今でこそ言われるサム・ペキンパーですが、当時は観客に受け入れられず、批評家には嫌われ、晩年はトレーラーハウスで孤独な余生を過ごしたそうです。
ガルシアの首を、自ら雇い主に渡す事を絶対に譲らないベニー。
「こいつのせいで16人死んだ。俺も、お前も、惚れた女もな!」と、首と銃弾を叩きつけるクライマックスは、死にゆく男の美学ですな(泣)
ペキンパーが「これは俺の映画だ!」と1番気にいっている作品であり、前半は愛する女性に夢を語る叙情的なシーン、後半はハエのたかる首に失った夢を語りかけるはかないシーン、そして意地のクライマックスにペキンパー流の美学が全て詰まっているのです!
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