「カリギュラは現代に既にいるのです」カリギュラ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
カリギュラは現代に既にいるのです
1980年公開
ボブ・グッチョーネという名前が製作、監督の何人かの中にあります
この人はニューヨーク生まれのイタリア系の米国人で、米国では有名人
なぜなら米国の成人向け男性雑誌プレイボーイ誌のライバルのペントハウス誌の創刊者だからです
プレイボーイ誌とペントハウス誌も政治スキャンダルとかの記事もあるけれど実のところ女性のヌードグラビアがメイン
ペントハウス誌はプレイボーイよりドギツイもので局部が丸見えのグラビアが断然多かったのです
1969年に米国で発行を始めて70年代から80年代にかけて大いに売れました
1982年の長者番付に名前がのるほどです
有り余って唸る金を使って映画を製作したのが本作というわけです
となれば、どんな映画になるのか知れたものです
1974年の「エマニエル夫人」、1975年の「O嬢の物語」なんてレベルじゃない本物のポルノなのです
ヘア解禁版で鑑賞しました
モザイクはかなり薄めです
かなり露骨です
今日のネットに溢れる無修正のポルノに、この40年前の作品は負けてはいないのです
超大作のポルノ映画を作ってヒットすれば、ペントハウス誌がまた売れるという寸法のメディアミックス商法です
目論見通り本作は大ヒットしました
さて本作の内容ですが、過剰なエログロのオンパレードに辟易することは間違いなしです
それが3時間弱も続くのです
メインの監督ティント・ブラスはイタリアのポルノ映画の巨匠といいます
だからポルノシーンはお手のものですが、本編の演出などはひどいの一言
脚本も美術もなかなかの人物が担当しています
セット美術、衣装などにも金がかかっているし、マルコム・マクダウェルやピーター・オトゥールといった大物俳優も騙されて出演しているのにもったいない限りです
エログロシーンを頭から排除すれば、
一応ちゃんとしたストーリーがあると分かります
そんなに無茶苦茶な設定でも筋だてでもなく、古典のギボンの「ローマ帝国衰亡史」や塩谷七生の「ローマ人の物語」が好きな人間が観ても噴飯することなく、ある程度の納得性はあるのです
キリスト教がローマ帝国の国教になる以前のヒューマニテイの欠如と、道徳や倫理を破壊することへの神への畏れが無い時代とはどんなものかを描こうとしているとも言えます
だから本作は逆説的に、一人の人間に権力が集中され欲望のままに生きることが許される独裁帝国がどのようなものになるのか
それを見事に表現していると言えるのです
もし、このストーリーをリドリー・スコット監督が撮ったなら「グラディエーター」のテイストの一大傑作になったかも知れません
21世紀の今日にこそ、神を畏れぬ独裁者が法治でなく人治で帝国を治める時、このような地獄が地上に現出するのだいう映画が求められていると思います
カリギュラは現代に既にいるのです
それゆえに、星をひとつおまけです
蛇足
ペントハウス誌は日本でも、昔銀座にあった洋書店イエナにもプレイボーイと並んで輸入されたものを売っていました
もちろん日本国内ではマジックで局部が黒塗りされていたものです
ハワイやグアムに行くと黒塗りの無いものが普通に売られていてつい買ってしまいがちでした
日本語版も一時期発行されていましたが、グラビアはもちろん自主規制でした