「スティーヴン・キングが愛した一本」狩人の夜 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
スティーヴン・キングが愛した一本
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キングだけではなく、多くの作家や映画監督がこの作品に魅せられたのではないか。
「ケープ・フィアー」「処刑人」など部分的に本作を真似ている映画もたくさんある。個人的にはゼメキス「ホワット・ライズ・ビニース」を観た時も映像的に似てるシーンがあるなあと思った。
私の好きなシャブロル監督の遺作にも「狩人の夜」に関するセリフが出てくる。公開から50年以上経って尚、愛され続ける作品なんだろうと思う。
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ダークサスペンスの傑作と謳われているけれど
ストーリーはお伽噺的、映像は幻想的、結末も牧歌的。
リアリズム溢れるサスペンスとは対極にあると思う。
それでも、底冷えするようなダークさがこの作品にはある。
主人公(恐らくチャールズ・ロートン監督の投影)が、徹底した子供嫌い・女性嫌い・人間嫌いだからだろうか。
そこには理由もなければ言い訳もなく、ただ憎んでいるという怖さ。
人間への純粋な憎しみを、こんなにも可笑しく美しく描いた作品が他にあるだろうか。
言い換えれば、憎むことでしか他人と交われない男の悲しさを掬い上げている。
人間を憎んでいる代わりに、動物(ふくろうや亀)を愛おしそうに撮っているのも何だか悲しいんだか可笑しいんだかわからないけれど、心に染みる。
憎しみを肯定も否定もしないアンモラルな映画だが、最後に愛が勝つという牧歌的な結末が用意されていて、アンモラルを直視できない私のような凡人はそのラストに少しほっとする。
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前述のシャブロル監督も寓意的なストーリーの奥底に頑な冷たさを忍ばせる名手だった。やはり「狩人の夜」が好きだったんだろうと思う。
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