「観客は芸術家を傷つけたりもする、しかし映画は見るものに確かに影響を与える力が有る」仮面 ペルソナ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
観客は芸術家を傷つけたりもする、しかし映画は見るものに確かに影響を与える力が有る
何かを抽象的に示す様な映像が多く、十分には理解出来なかった。ただ、少なくとも普通では無い映像は音楽とともに、得体の知れない不思議な緊張感を感じさせた。
漠然としたイメージ的把握だが、子供を愛せず言葉を失った女優エリザベートは、映画監督ベルイマン自身の姿を反映している様。挿入される幾つかの画像から、ホロコーストや焼身自殺等の強烈な現実を前に、自分のセックスや神をテーマとする自分や自分の母親語りの虚構的映画にはたして価値はあるのか?そういう真摯な問いかけが、テーマとなっている様に感じた。
看護婦アルマは、観客や映画評論家のイメージか。時に称賛するが、ガラスのかけらや言葉で散々に傷つけたりもする。ただ、傷つけあったりもしたが、精神的に一時的に一体化もして、その結果として過去の堕胎の傷が有ったアルマは確かに自分の人生に新たにたち向かう糧を得た。そして、看護師に危害さえ与えるエリザベートも、映像で重ねられた映画の作り手と共に、観客の人生に影響を与える力が有ることを自覚出来、新たな旅たちを行う。まあ最後まで殆ど言葉を発せず仕舞いで、いちいち説明しない。これが自分のやり方ということだろうが、もう少しほんの少しだけ、より分かりやすくする様なサービス精神があっても良い気もするのだが。
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