「あ、これ『ファイト・クラブ』でみたやつだ!」仮面 ペルソナ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
あ、これ『ファイト・クラブ』でみたやつだ!
突然口を噤んでしまった女優と彼女の世話をする看護師との、奇妙な交流を描いたサスペンス・ドラマ。
監督は『第七の封印』『野いちご』の、大巨匠イングマール・ベルイマン。
「ペルソナ」とは心理学用語であり、外向きの表層的な人格のこと。人気ゲームのタイトルにもなっており、もはや一般的な言葉として広く浸透している。
主な登場人物は2人。
1人は対外的な人格を装うことに絶望し、自ら口を噤んだ人気女優。
もう1人は「婚約者がおり、仕事にも充実している。私は幸せなんだ。」と自分に言い聞かせており、患者である女優に親身になって接する若き看護師。
この2人が、閑静な別荘という閉ざされた空間でともに過ごしている内に、それぞれの人格が混ざり合っていく、という作品。…これで合ってるよね?🤔
この2人は言わば1人の人間が持つ人格のメタファー。
女優は個人が持つ本質的な人格。看護師は対外的に用意された人格(ペルソナ)。
孤立した空間に閉じこもることで、ペルソナが徐々に剥げてゆき、完全に一つの人格へと融合しようとするが、結局その試みは失敗に終わる、という悲劇的な物語であり、人間社会で生きる以上ペルソナを手放すことは出来ないという悲観的なテーマを感じる一作だった。
普段芸術映画なんて観ないし、モノクロ映画なんて尚のこと観ないのではっきり言って何を面白がって良いのかわからなかった…。
こういう映画を楽しむには訓練が必要なんだろう。
冒頭のモザイク状にモンタージュされた映像。もうここから「ヤバい!訳わからない系の映画だっ!」と思ったが、思ったよりは物語性があって助かった。
敬愛する監督デヴィッド・フィンチャーが大きな影響を受けた作品であり、個人的オールタイムベスト級の映画『ファイト・クラブ』には本作のオマージュが散りばめられている。
冒頭で一瞬だけ映るエレクチオンしたおちんちんは、『ファイト・クラブ』のエンディングで引用されていたし、途中で映画のフィルムが焼き切れるような表現も観たことある!ってなった。
そもそも二つの人格が一つになるという本作のテーマが『ファイト・クラブ』に通じるものだし、想像以上にフィンチャーは本作から影響を受けているんだな、と学ぶことが出来た。
デヴィッド・フィンチャーファンにはオススメ!