「単純なようで難解」仮面 ペルソナ kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
単純なようで難解
切れ味鋭く、深みも感じさせるさすがの作品でした。
難解との声が多いようですが、さらっと観るならばそこそこキャッチーで、深く味わうならば相当難しい映画では、との印象を受けました。
主人公は失語症の女優・エリーサベットと彼女のケアに勤しむ看護師アルマ。登場人物はほぼこの2人。彼女たちは顔立ちが似ていて、ひとりは沈黙、ひとりは多弁と対になっています。
これで、タイトルがペルソナですから、所謂ドッペルゲンガーものであることは明白です。しばらく観ているうちに、エリーサベットが主体でアルマが影であることが判ってきます。
とはいえ、実は序盤10分くらいで、エリーサベットの主治医である女医が、本作のネタバレをしているのですけどね。なんともファンキーな構成!
女医曰く、
「エリーサベットは本来の自分でありたいが演技しているので(つまり仮面=ペルソナを被っている)、本当の自分と仮面との間のギャップに苦しんでいる。本当はさらけ出して無になりたい(リセット願望的なものか?)が、そうはなれず、死ぬこともできず、かといって演技したくないから沈黙している。でも本当のあなたには誰も興味を持ってない」
とのこと。
つまり、これから本当の自分(の一部)であるアルマが、彼女の本音をブチまけるという流れがここで示されておりました。
実際に、エリーサベットの影=アルマによって、子どもを愛することができないという本音が暴露され、抑圧が解放されて影が統合されるという、女医のガイドライン通りの展開に。
正直、序盤からネタバレ映画を観ているような気持ちでしたが、独特の緊張感があり、飽きることはまったくありませんでした。
冒頭の不快なモンタージュ、ベトナムの僧侶の焼身自殺やナチスに連行されるユダヤ人一家の写真に過度に怯えるエリーサベット、そしてラスト直前に突如カメラマンとベルイマンが現れメタフィクション化する瞬間など、謎も多いです。
おそらく、影の統合はオモテの主題であり、深淵なウラの主題があるように思えます。
映画・女優・メタフィクションあたりがヒントになりそうですが、現在の私のレベルではお手上げ。エリーサベットの怯えも本当にわからないです。
また数年後、実力をつけて裏の主題に挑みたいと思いました。