「原作における主人公の繊細な心理描写には遠く及ばず…」悲しみよこんにちは KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
原作における主人公の繊細な心理描写には遠く及ばず…
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いい歳をして、
ゲーテの「若きウェルテルの悩み」
ジッドの「狭き門」
ヘッセの「車輪の下」
そしてサガンの「悲しみよこんにちは」
を悩める若者シリーズとして
読書した後、
かつて「悲しみよ…」は映画で観た記憶が
あったので改めてレンタルして再鑑賞した。
4作品共に、主人公の未熟で独りよがりの
観念的な思考という共通項を
原作には感じたが、
特に「悲しみよ…」では、
そんな観点だけに留まらず、
自由と秩序の葛藤の点で
興味深いものがあった。
しかし、この映画ではその部分が
軽く処理されてしまい
平板な作品になってしまっていた印象だ。
原作で語られるセシルの
たくさんの繊細な心理描写を映像処理する
ことは確かに難解ではあったろうが、
彼女の細やかな思索が要約されてしまった
のは無論のこと、
逆に原作では読者には伏せられていた、
アンヌが聴くレイモンとエルザの会話内容を
あからさまに台詞として表現する等、
安易な演出は
原作の深みを台無しにしてしまった印象だ。
オットー・プレミンジャー監督作品として
「栄光への脱出」や
「バニーレイクは行方不明」を観たが、
この作品も含め、彼には
あたかも4作品の若い主人公達のような
何か独りよがりの要素を感じ、
私としては、その演出力に賛同しかねる監督
の一人ではある。
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