「確かに単なる恋愛ロマンスの範疇に収まらない、ドラマ性とスペクタクルを兼ね備えた名作ですね。」風と共に去りぬ 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
確かに単なる恋愛ロマンスの範疇に収まらない、ドラマ性とスペクタクルを兼ね備えた名作ですね。
7万票のリクエストから25本を厳選した今年の『午前十時の映画祭15』。
本日は今でも世界歴代興行収入第1位、ロマンス映画かつスペクタクル映画の金字塔『風と共に去りぬ』をTOHOシネマズ新宿さんで鑑賞。
『風の共に去りぬ』(1939年/222分)
中学時代に映画通を名乗るにはと通過儀礼のように鑑賞して以来、実に40年ぶりの鑑賞。
本編222分、休憩を含むと約4時間の超大作。
スカーレット(演:ヴィヴィアン・リー)とバトラー(演:クラーク・ゲーブル)のロマンスを軸に描いた作品と記憶していましたが、改めて見直すと大規模な弾薬庫の炎上シーンやアトランタ駅周辺の数千名の負傷兵のシーンなどとにかく壮大なスペクタクル超大作。
カラー作品なので見過ごしがちですが、制作は戦前の1939年、ちょうど第二次世界大戦開始された85年以上の大昔で、当時のハリウッドならびにアメリカの勢いに驚嘆です。
ストーリーも甘いメロドラマ、ラブロマンスだったような記憶でしたが、実際は利己的で傲慢、他人のことなどお構いなしの鼻つまみ者、貞操観念ゼロで性悪、それでも常に自分に正直なスカーレットと、彼女の生命力あふれた精神に心惹かれるバトラーの長きにわたる一途な思いを描く作品。
そんなスカーレットが南部の恵まれた上流階級から一転、南北戦争の敗戦でその日の食事にも窮する極貧の無一文から手練手管を弄して再び這い上がる「細うで繁盛記」のようなドラマ展開。
ラストも本当の愛を知って改心したときには、時すでに遅く、バトラーとの悲恋の別れ、それでも明日に向かって力強く前を向く…。
原作本も当時空前のベストセラーになったとのことですが、伝統的な価値観や女性観を打破、男に依存しない自立したスカーレットに多くの女性たちが共感、支持をしたのでしょうか。
まさに風(南北戦争)と共に去りぬ(南部の上流階級社会)激動の時代を生き抜く難役スカーレットをヴィヴィアン・リーが時にエレガントに、時に力強く演じており適役。
またスカーレットの激情を表現したかのようなタラの燃えるような夕焼けは実に壮麗で印象に残ります。
確かに単なる恋愛ロマンスの範疇に収まらない、ドラマ性とスペクタクルを兼ね備えた名作ですね。