「残酷で皮肉だらけの物語はあの夫妻だけの体験ではない」風が吹くとき humさんの映画レビュー(感想・評価)
残酷で皮肉だらけの物語はあの夫妻だけの体験ではない
野中の一軒家の窓からみえていたのどかな風景は夫妻の平和な世界そのものだった。
「爆撃が終わったら戻すよ。」
「一瞬でケリがつく。」
「戦争中は良かったわ。」
戦勝国の一員としての国への誇りや信頼はこんなに厚く安心をもたらすのか。
一瞬にして破壊された日常が来てもそれは揺るがなかった。
政府からの手引き書に疑いなき夫と、思い出を大切に生き夫に添う妻は、爆風を受けた家で〝準備万全らしい〟国の助けを待ち続ける。
汚染された飴とも知らずにわけあい、雨水を溜めて使い、身を守るというじゃがいも袋の中で祈りながら。
それぞれの信じられるものがあることが〝平和〟だというならば、夫妻の小さな世界は最後までそうだったのかもしれない。
力果てる前に嘆いた夫のあの言葉がのこる。
「わしらの命は世の中の景気次第だ」
ある程度の知識を持ちながらも現実の状況と噛み合っていなかった夫やまかせて疑わない妻を半ば残念にみていた。
でも、ふと、事実の横で動きだせない私たちと一体何が違うのだろうかと思った。
進むのも止めるのも人間なのに、差別、暴力、侵略は今も終わらない。
あの風の威力を、いやそれ以上のなにかを切り札にして威嚇は続く。
>それぞれの信じられるものがあることが〝平和〟だというならば、夫妻の小さな世界は最後までそうだったのかもしれない。
疑いなく信じられるものを信じたまま死んでいくのも、ひょっとして幸せなのかもしれない、、とここを読んで思いました。
未来に希望を見い出している人々と、絶望を抱いている人々とは、今後未来が枝分かれして違う時空を生きていく事になるんじゃないか?と。
最近、割と本気で思わなくもないです。明るく幸せで平和な未来の方へ進みたいと思います^ ^