革命児サパタのレビュー・感想・評価
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メキシコの革命家サパタを演じるマーロン・ブランドの内省的な表現力とジョセフ・ワイズマンの曲者振り
制作ダリル・F・ザナック、脚本ジョン・スタインベック、監督エリア・カザン、出演マーロン・ブランド、アンソニー・クィンで出来が悪いはずがない。メキシコに革命を起こし大統領に上り詰めるも、理想と現実に乖離に失望する農民出身のエミリアーノ・サパタを演ずるマーロン・ブランドの内省的な演技が地味ながらも、その実力を見せ付ける。カザンの演出も骨太なタッチと大胆なカットを駆使して、メキシコの土着性を映像に焼き付けている。対立するクィンの演技も素晴らしい。その中で、個人的に注目したのは、助演のジョセフ・ワイズマンの曲者振りだった。知性がありながら、他人に依存して利用しないと生きれない謀反人の卑劣さが良く出ていた。偶然にもウイリアム・ワイラーの傑作「探偵物語」に感動した記憶が残る状態で見学したのもあり、このワイズマンの強烈な存在感に感服してしまった。カザン作品としては余り評価されていない映画だが、個人的には好きな部類に入る。 1977年 7月22日 地上波テレビ
アンソニー・クインの快進撃は本作から始まったのです
メキシコ革命 日本でいえば大正時代の物語 いかな革命といえども権力を手にすれば、その瞬間に腐敗がはじまり、権力闘争の火蓋が新たに開かれる メキシコ革命も、ロシア革命も同じです 人間のやることなのですから エリア・カザンらしいストーリー展開です 革命の英雄サパタはかって批判した権力者と全く同様になっていることに気がつき身を引きますが、今度は権力闘争の餌食となるのです そのサパタをマーロン・ブランドが好演します しかし映画を観終わってみれば、印象に強く残されるのはその兄役のアンソニー・クインなのです 彼が主演だったかのように彼の演技が強烈にあなたの心に刻まれていることでしょう エリア・カザン、マーロン・ブランドを追いかけて本作を観る人が多いでしょう しかしアンソニー・クインの快進撃は本作から始まったのです ぜひ彼に注目して観て頂きたいと思います
マーロン・ブランド
冒頭、大統領に陳情する農民たち。大統領はその名簿に強く訴えたサパタの名前を見つけ丸で囲む。大統領になったサパタの元へ同じような陳情団がやってきて、デジャビュのように同じ行動をとる。歴史は繰り返す。戦いによって得た権力もまた暴力によって覆される。 エピソードを詰め込みすぎのためか、展開がスピーディーではあるが、端折りすぎ。自分の農園は自分で守らなければならないという暴力の連鎖を庶民にまで押し付ける政治。自分の兄が将軍になっても貧乏生活のため農民から搾取する姿。一体誰が悪なのか・・・外敵アメリカが一番の悪に違いないが、そこまでは言及していない。 農民たちのために優雅な暮らしなど求めないマーロン・ブランドの姿は庶民的であり好感も持てるのだが、虚しすぎる結末。憤りをどこにぶつけることなく、自衛の手段を訴えるところは、アメリカ銃社会を助長しているのかもしれない・・・
マーロン・ブランドはふつう
メキシコ革命の英雄の陰陽をエリア・カザンが描く。 カザンの作品はまだ数本しか観ていないが、これはそれほどには屈折した主人公ではない。「欲望という名の電車」のマーロン・ブランドの曲がり具合は凄かったけど、彼が演じる革命家サパタは屈折してはいない。むしろ、貧しく弱い者を想う真っ直ぐな革命家である。 権力や革命が善意から始まり、敵がいなくなれば自らが民衆の敵となる矛盾。民主主義や革命がそうした権力の矛盾とは無縁ではいられないことを映画は訴えかけている。
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