「こんな凶悪犯罪者が英雄なのか」俺たちに明日はない Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな凶悪犯罪者が英雄なのか
総合:45点
ストーリー: 35
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 70
音楽: 60
建国からまだ間がなく歴史上の英雄が少ないアメリカでは、何か大きなことをしたものは英雄視される傾向がある。たとえそれが犯罪者であっても、あるいは体制に逆らう犯罪者であるからこそ。
でも私はこういう考えが嫌いです。ボニーとクライドは欲望の赴くまま好き勝手に犯罪をしている一方で、その被害者たちがどんなに苦しんだかについてまともに取り上げられることはない。「明日にむかって撃て」とかもそうなんですけれど、人の痛みもわかろうとしないままに無軌道に暴走する人殺しの犯罪者連中を、アメリカはなんでこんなに持て囃すのかなという疑問がずっと付きまとう。まして彼らが活躍したときには、西部開拓の無法時代はとっくに終焉を迎えているのに。犯罪が行われた当時のマスコミが新聞を売るための話題作りのために、彼らを面白おかしく利用して英雄にしたというのもあるのかもしれません。または映画公開当時はベトナム戦争や学生運動があったりして、政府に逆らう反体制派というのに特に支持が得られやすい時代というのもあったんでしょう。
この映画が好きになれないもう一つの理由は、登場人物がただのその日暮らしのチンピラにすぎないというのもあります。彼らは特別有能だったり自らを鍛えたり計画的に大犯罪をしているわけでもなく、単に低知能で罪の意識が欠けているだけの自堕落でくだらない人物たちです。彼らの生き様にちっとも共感も出来ないし格好がいいとも思えない。「いつまでもこんな危険なことやってられないので、景気が良くなればこんなことはやめて幸せに暮らす」などと能天気に言っているのを聞くといらいらしてくる。
劇的な最後の印象が強いのもあって、映画としては名作に分類されるのかもしれません。しかしそれでも私の価値観に合うものではありませんでした。むしろもっと早く彼らが死ねば、被害者が減って良かったのにとすら思いました。このような凶悪な犯罪者が人気が出てしまうのは、麻薬やヒッピー文化も全盛でアメリカが病んでいたのかと感じます。