オルフェの遺言 私に何故と問い給うな

劇場公開日:

解説

詩人ジャン・コクトーが四九年の「オルフェ」に引続き脚本を書き監督した映画で、自から主演している。撮影はローラン・ポントワゾー、音楽はジョルジュ・オーリックが担当。出演者は、コクトーをはじめとして前作「オルフェ」に出演したコクトーの養子エドゥアール・デルミ、マリア・カザレス、フランソワ・ペリエのほかジャン・マレー、ユル・ブリンナー、パブロ・ピカソ夫妻など多彩な顔ぶれである。

1960年製作/79分/フランス
原題または英題:Le Testament d'Orphee -ou ne me demandez pas pourquoi-
配給:東和
劇場公開日:1962年6月1日

ストーリー

映画は前作品「オルフェ」の一場面に始まる。オルフェが生と死の世界をたびたび往復するのだ。「オルフェ」が終るとタイトル、そして詩人コクトーがルイ十五世時代の詩人の姿で現れる。彼は現代の化学教授の生涯に時をさだめず出入する。そして老教授のピストルで射殺された詩人は現代に生きることになる。現代詩人の姿となった詩人は、半獣人のあとをつけてジプシーの一団にまぎれ込み詩人セジェストの写真を手に入れた。彼がそれを引き裂いて海に投げると、セジェスト(エドゥアール・デルミ)が海からとび上がり彼の目の前に現れ詩人の案内役になる。セジェストはコクトーにハイビスカスの花をあたえてあなたは生物蘇生学の大家だと言う。やがて詩人は死の女王(マリア・カザレス)と運転手ウルトビーズ(フランソワ・ペリエ)の前にひき出され、女王と詩人の間に映画論、詩論がかわされる。更にコクトーは、セジェストに案内され印象派の絵からぬけ出した貴婦人の邸に案内される。この婦人は探偵小説を読みながら、その解決が七十年後でなければ出版されないことを嘆く。次に詩人はヨットで海に出た。そこでトリスタンをさがす「悲恋」のイゾルデに出逢う。やがて上陸したのは彼の少年時代の町である。幼ない頃のコクトーが知らん顔で通りすぎる。荒れ果てた石切場、ジャズや恋人達を通りすごすと子供達がやって来て詩人に署名をせがんだ。その署名を化物みたいな偶像の口に投げ込むと、巨像がベロベロと小説や詩をはき出した。ここでセジェストは、七十年も生きているのにまだ知りたいのかと詩人に言い残して消え去った。一人になった詩人は巨大なアーケードを入って行く。ここは女神ミネルバの広間だ。この芸術の女神に彼は手にしたハイビスカスの花を捧げたが、女神は気に入らず手にする槍で詩人の胸をつきさした。半獣人に死体が運ばれた後には赤い血が残りハイビスカスの花が咲いた。これを闘牛場の見物席のようなところからみつめるピカソ夫妻、ルチア・ボゼーなどの人々。墓石の上に寝かされた詩人の眼はかっと見開き、口からは煙がたちのぼる。詩人はゆっくり立ちあがり野原に出た。詩人のかたわらをアンチゴーヌとエディプが通り過ぎる。詩人はふり向きもせず歩き続ける。そこへ爆音も高く警察のオートバイがやって来た。死の女王の警官ではなく単なる白バイだった。ここでセジェストが姿を現し、地球はあなたの世界じゃないと詩人を誘って岩の中に姿を消した。詩人が消えた道では、現代の若者達の自動車が猛スピードで往来するのだった。

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