「【“僕は君を幸せにしたいんだ!”純朴な青年が、一目惚れした女性への熱意溢れる求愛する姿を、イランの牧草地を背景に、優しい目線で描いた作品。】」オリーブの林をぬけて NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“僕は君を幸せにしたいんだ!”純朴な青年が、一目惚れした女性への熱意溢れる求愛する姿を、イランの牧草地を背景に、優しい目線で描いた作品。】
ー アッバス・キアロスタミ監督作品に嵌って、4作目。
今作はコケルというイラン北部の山岳地帯を舞台にした
1 「友だちのうちはどこ?」・・間違ってノートを持ってきちゃった友だちにノートを返すために
駆け回る少年の姿が沁みた作品。
2 上記作品を制作した土地が大地震に見舞われ、心配したアッバス・キアロスタミ監督が彼の地を訪ねるドキュメンタリータッチの「そして人生は続く」
そして、今作は「そして人生は続く」で途中出てきた、震災後の翌日に結婚した役柄を演じた青年を主役にした”純朴な青年の熱意溢れる求愛”物語である。ー
■感想<Caution 内容に触れています。>
・ホセイン君は映画の雑用係だったが、急遽、役を任される。
震災後の翌日に結婚した新妻に対し、あれこれと言う役なのであるが、ホセイン君は役はそっちのけで一目ぼれした、新妻役の字が読めるタヘレさんに
”僕が結婚するのは幸せになるためだ。そして、君を幸せにしたいんだ!”
と、猛アタック。
けれども、両親を亡くしているタヘレさんの態度はツレナイ・・。
お婆さんにイロイロと吹き込まれている事もあるのかもしれない。
”字が読めない”
”レンガ職人見習い・・”
”家なしに嫁なし!”
ー 凄いなあ・・。持ち家が無いと駄目なのね・・。ー
・けれど、ホセイン君はアキラメナイ。
撮影の合間の雑用をしながらも、お茶を持って行ってあげたり、彼女の気を引こうと頑張る。
”僕が、お茶を淹れたり、君がお茶を淹れたり・・。これが結婚だよね。”
ー ホセイン君の顔が、誠実な人柄を表しているように思える。だから、彼のタヘレさんへの猛アタックを観ていても、”頑張れ!”と言う気持ちになるのである。ー
<ラスト、撮影後歩いて帰るタヘレさんの後を、走って追っていくホセイン君。タヘレさんは逃げるでもなく、彼の前を歩いて行く。
その姿を、カメラはロングショットで撮っている。
漸く追いついたホセイン君は、タへレさんに話しかけ、急にこちらに向かって駆け戻って来る。
道ではなく、草原を斜めに・・。
きっと、
”タヘレさんに、良い返事を貰ったんだよね!君の熱い想いが伝わったんだよね!”
と思いながら、彼の姿を見ていましたよ。>
■アッバス・キアロスタミ監督は「桜桃の味」を観て一気に好きになり、一気呵成に4作を鑑賞した。
どの作品も淡々としたトーンながら、人間の善性を肯定する監督の視点が好きである。
世界には、素敵な作品を作ってきた監督が、まだまだ沢山入らっしゃるのであろう。
素晴らしい監督とその作品群に出会えた事は、僥倖であった。