劇場公開日 2021年10月16日

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「【“僕は君を幸せにしたいんだ!”純朴な青年が、一目惚れした女性への熱意溢れる求愛する姿を、イランの牧草地を背景に、優しい目線で描いた作品。】」オリーブの林をぬけて NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【“僕は君を幸せにしたいんだ!”純朴な青年が、一目惚れした女性への熱意溢れる求愛する姿を、イランの牧草地を背景に、優しい目線で描いた作品。】

2021年9月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

知的

幸せ

ー アッバス・キアロスタミ監督作品に嵌って、4作目。
 今作はコケルというイラン北部の山岳地帯を舞台にした
 1 「友だちのうちはどこ?」・・間違ってノートを持ってきちゃった友だちにノートを返すために
 駆け回る少年の姿が沁みた作品。
 2 上記作品を制作した土地が大地震に見舞われ、心配したアッバス・キアロスタミ監督が彼の地を訪ねるドキュメンタリータッチの「そして人生は続く」
 そして、今作は「そして人生は続く」で途中出てきた、震災後の翌日に結婚した役柄を演じた青年を主役にした”純朴な青年の熱意溢れる求愛”物語である。ー

■感想<Caution 内容に触れています。>

 ・ホセイン君は映画の雑用係だったが、急遽、役を任される。
  震災後の翌日に結婚した新妻に対し、あれこれと言う役なのであるが、ホセイン君は役はそっちのけで一目ぼれした、新妻役の字が読めるタヘレさんに
 ”僕が結婚するのは幸せになるためだ。そして、君を幸せにしたいんだ!”
 と、猛アタック。
 けれども、両親を亡くしているタヘレさんの態度はツレナイ・・。
 お婆さんにイロイロと吹き込まれている事もあるのかもしれない。
 ”字が読めない”
 ”レンガ職人見習い・・”
 ”家なしに嫁なし!”
 ー 凄いなあ・・。持ち家が無いと駄目なのね・・。ー

 ・けれど、ホセイン君はアキラメナイ。
 撮影の合間の雑用をしながらも、お茶を持って行ってあげたり、彼女の気を引こうと頑張る。
 ”僕が、お茶を淹れたり、君がお茶を淹れたり・・。これが結婚だよね。”
 ー ホセイン君の顔が、誠実な人柄を表しているように思える。だから、彼のタヘレさんへの猛アタックを観ていても、”頑張れ!”と言う気持ちになるのである。ー

<ラスト、撮影後歩いて帰るタヘレさんの後を、走って追っていくホセイン君。タヘレさんは逃げるでもなく、彼の前を歩いて行く。
 その姿を、カメラはロングショットで撮っている。
 漸く追いついたホセイン君は、タへレさんに話しかけ、急にこちらに向かって駆け戻って来る。
 道ではなく、草原を斜めに・・。
 きっと、
 ”タヘレさんに、良い返事を貰ったんだよね!君の熱い想いが伝わったんだよね!”
 と思いながら、彼の姿を見ていましたよ。>

■アッバス・キアロスタミ監督は「桜桃の味」を観て一気に好きになり、一気呵成に4作を鑑賞した。
 どの作品も淡々としたトーンながら、人間の善性を肯定する監督の視点が好きである。
 世界には、素敵な作品を作ってきた監督が、まだまだ沢山入らっしゃるのであろう。
 素晴らしい監督とその作品群に出会えた事は、僥倖であった。

NOBU