落ちた偶像のレビュー・感想・評価
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大人の世界に散らばる秘密と嘘
ロンドンのベルグレイブ広場にある大使館で働く
執事の秘密と嘘が物語の軸となるのだが
大使の息子である少年も執事の妻から愛する蛇を守る為に
小さな嘘をつく
「嘘をついてはいけない」と叱る彼女もまた…
ありきたりの秘密を抱える執事と妻の確執は
騒動を引き起こすのだが
大人の事情や駆け引きなど理解できない少年は
秘密と嘘と正義と情で混乱し始める
そして恐怖にもかられ、ちょっとした狂乱状態になってしまい可哀想だった
執事の嘘のひとつに
良くも悪くも想像の翼が広がったりする
少年を演じるボビー・ヘンリーは、一世一代の出来
執事を平凡にも非凡にも見えるようにラルフ・リチャードソンが演じ
潔癖症で強権的な妻、優しげな愛人…等々、俳優陣が総て魅力的
ミシェル・モルガンがしっとりと美しかった
この映画のカメラとは相性がよいような
建物の裏の非常階段は
逃げ出すための、真実を知るための秘密と嘘の役割も表しているみたいだった
子供の目線でカメラが大人を捉えたりする
紙ひこうきの使い方も上手かった
〈茶碗の中の嵐〉と言ってしまえば、それまでだが
心理劇であり、警察とのやり取りが心理戦の様相を呈してくると少年は迷走してしまう
ラストで母親が戻って来たし
執事の大人の事情と嘘をうっすら理解した少年は
もう前みたいに彼にまとわりつかない、ということだろうか
大人の階段を一歩のぼった、みたいな
舞台が大使館というのも意味深な古典的名作
第三の男の前座
「第三の男」のグレアム・グリーン原作映画です!
キャロル・リード監督ベースで観たが、原作・脚本がグレアム・グリーンとのことでより興味が増した。
「情事の終わり(映画タイトル名=ことの終わり)」が印象的だったためだが、この映画では「ことの終わり」のような宗教色はない。
嘘と秘密を約束させられた少年の嘘で逆に混乱する事件解明、
果たして製作側の狙いは、
大人の都合による子供の犠牲への警鐘と捉えるべきか、
または子供の持つ魔性と捉えるべきか、
と迷うところで、
またタイトル名についても、
子供の眼からは憧れた大人への幻滅感なのかもしれないし、それが所以とは理解しつつも、
執事に同情出来る背景が明確であったり、ラストで事件への疑いも晴れているので、
私としては「落ちた偶像」のタイトル名にしっくりこないままに終わってしまった。
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