「栄華の彼方へ」オズの魔法使 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
栄華の彼方へ
この映画のすべては茶褐色の画面からギラギラした魔法の世界に降り立ったあの瞬間に賭けられている。『ジャズ・シンガー』で音声を得た映画が、今度は色彩を得た。ハリウッドの栄華はこれからも、どこまでも果てしなく続いていくんだという希望と歓喜の表明。
めくるめく活劇を織り成す4人の冒険者たちはそれぞれがみなある欠落を抱えている。カカシは脳みそを、ロボットは心を、ライオンは勇気を、そして少女は家を。しかしそれらの欠落が悲痛げに強調されることはなく、それよりはむしろやがて来たる充足に対する希望ばかりが謳われる。できないことは何もない、という全能感とでもいおうか。それはますます存在感を強めていくハリウッドという空間の自信の表れのようにも思われる。
ただまあ今見るとキャラクターの物理造形にせよ背景美術にせよあるいは物語にせよハリボテの感は否めない。あの頃ハリウッドが追い求めた理想世界が、かくもチープな虚構だったという事実は、それ以降ハリウッドが辿ることになる一連の凋落劇を踏まえるといくぶんか示唆のように思える。
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