劇場公開日 2000年4月29日

「【”命の継承、そして母親の深い愛”ペドロ・アルモドバル監督の深い人間愛が全面的に表現されたヒューマニズム溢れる物語。】」オール・アバウト・マイ・マザー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”命の継承、そして母親の深い愛”ペドロ・アルモドバル監督の深い人間愛が全面的に表現されたヒューマニズム溢れる物語。】

2021年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 今作のラストに流れるテロップが、ペドロ・アルモドバル監督の想いの全てを表現していると思う。ー

◆感想<Caution 内容に触れています。>

 ・今作に登場する人物は、皆、他者に対する何らかの善性を持っている。
 その代表が、愛する息子エステバンを事故で失ったマヌエラだと思う。
 臓器移植コーディネーターだった彼女が、自分の息子の心臓を見知らぬ男性に移植する判断をし、その男性が健康そうに、病院から出て来るシーン。
 柱の陰に隠れて、涙を流すマヌエラの姿。

 ・息子を失った傷が癒えないマヌエラが、その死を、昔別れた元夫で性転換したロラに伝えるために、マドリードからバルセロナへ旅立つ。
 そこで、出会った且つての仲間で、男性器は残しながらも、性転換したアグラード。
 息子の死のきっかけになってしまった女優、ウマ・ロッホ。(彼女に責は全くない。)
 HIVである、ロラの子を宿した同じくHIVに感染したロサ。
 ー ペドロ・アルモドバル監督は、誰も真の悪者としては描いていない。
   様々な生き方を、自己責任も含めて、優しい視線で描いている。ー

 ・ロサは元気な男の子を生むが、自らは死してしまう。
 その彼女が臨月の際に、マヌエラに言った言葉。
 ”名前は、エステバン。母親は私達・・。”

 ・そして、ロサの葬儀で久しぶりに会った、HIVのためやつれたロラに対し、息子の遺したノートを見せ(ロラは、自分の前から姿を消した若きマヌエラが妊娠していた事を知らなかった・・)、息子の自分に対する想いを知り涙するとともに、自らの血を引いた赤子に愛おしそうに口づけをするのである。

<ロサの子を抱いて、列車に乗り込むマヌエラの表情が印象的である。
 それは、今作で劇中劇として度々描かれる”欲望という名の列車”の登場人物たちのようにはならずに、自らの手でキチンと再び授かった新しい命を”母”として育てるという決意を秘めた表情に見えたからである。>

NOBU