「ジョン・ランディスの底意地の悪い(?)演出 と特殊メイクの天才リック・ベイカーが手がけた驚愕の変身シーンによって生まれた奇跡の狼男映画」狼男アメリカン 盟吉津堂さんの映画レビュー(感想・評価)
ジョン・ランディスの底意地の悪い(?)演出 と特殊メイクの天才リック・ベイカーが手がけた驚愕の変身シーンによって生まれた奇跡の狼男映画
恐怖と笑いは紙一重だとよく言われる。
人間、何か恐怖を感じたときに防衛反応として笑ってしまうというのはよくあることであり、チンパンジーも自分より強そうな相手と向き合って恐怖を感じたとき笑ったような顔になる。
また、笑いには攻撃的な側面があり、イジられたり笑い物にされることに恐怖を感じるというのは誰しも経験があることだろう。
恐怖の中に笑いが隠れていて、笑いの中に恐怖が隠れている。
恐怖を描くのがうまい監督たちの中にはそのことが分かってる人たちが多い。
『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパーや『死霊のはらわた』のサム・ライミはその代表と言えるだろう。
天才ヒッチコックや天才キューブリックも「分かってる」。
だいたい鬼才と呼ばれるような人はみんな分かってるので、鬼才ティム・バートンも鬼才テリー・ギリアムも「分かってる」。
『ブレイン・デッド』は未見なのだけれど『さまよう魂たち』を観る限りピーター・ジャクソンも「分かってる」。
最近だと『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールも「分かってる」。
ジョン・カーペンターは分かってるのかどうかちょっと不安になるけれど(笑)、いや、『ゴースト・ハンターズ』を撮ったりするんだからやっぱり彼だって「分かってる」!
そして当然のことながら、本作を監督したジョン・ランディスも「分かってる」。
この作品の圧巻はなんといっても狼男の変身シーンである。
特殊メイクの天才リック・ベイカーが手がけた映画史に残る驚愕の変身シーンであり、明るい光の下で手や顔がゴキゴキと変形していき、とにかく凄まじい迫力なのだ。
それなのにバックでかかる音楽が往年の名曲「ブルー・ムーン」のソウル・アレンジ!軽快な歌声とメロディで全然怖くない音楽なのだ。
全然怖くない音楽で、凄まじい変身シーンを見せられるという、この違和感!
でも、怖いシーンで怖い音楽がかかるというのは言わばお化け屋敷の怖さ、アトラクション的な予定調和の怖さなのである。
現実に怖い思いをするときに怖い音楽などかからないのであり、むしろラジオやテレビから軽快な音楽が流れているときに流血の惨事が起きたりするかもしれない。
アトラクションや絵空事とは違う、現実的な恐怖や不快感を無意識のうちに感じ取って観客は戦慄することになるのだ。
この作品には主人公デヴィッドの前に、狼男に殺されてその呪いを受けた亡霊たちが現れるのだが、彼らも別に怖い音楽とともにおどろおどろしく現れたりしない。
亡霊たちは別にお化け屋敷でお客を怖がらせようとして出てきたわけではないので、生きている時と同じように気さくに振る舞い、主人公にニッコリ笑いかけて「ハーイ」とか言ったりする。
ただし、血まみれでズタズタに引き裂かれた、殺されたときのままの見るも無惨な姿で。
おどろおどろしい音楽で恨めしそうに現れるよりよっぽど怖い!
この作品は一事が万事こんな調子であり、普通はホラー・コメディと言うとコメディの方に寄せるものだが、この作品はあんまり寄せてない。
いや、笑えるシーンもそれなりにあるのだが、それよりも無理矢理コメディ要素をねじ込むことでかえって陰惨さが増して観客がイヤ〜な気分になるという仕掛けなのだ。
恐怖と笑いが紙一重だということを分かってるジョン・ランディスの底意地の悪い(?)演出が冴え渡っていると言っていいだろう(褒めているのである)。
エンディングもジョン・ランディスの底意地の悪さ(?)が炸裂している。
ネタバレになるので言及は避けるが凄惨なラストである。だが観客はその余韻に浸ることは決してできない。理由は是非ご自分の眼で確認していただきたい。
今でこそ本作はカルト映画として不動の地位を確立しているが、何の予備知識もない当時の観客がポカーンとする様子が目に浮かぶ(笑)。
笑おうとすると怖くなり、怖がろうとすると笑ってしまう。
そんな奇妙な映画体験ができる奇跡の作品であり、狼男映画としても今後これ以上の狼男映画が現れるかどうかと言えるほどの傑作。
狼男映画が好きだと言っておきながら本作を観ていない人間がいたら間違いなくその人間はモグリである(笑)。
えーっ、今はWikiにも載ってるんですね!37年前はランディスファンくらいしか知らなかったのに。「星の王子ニューヨークに行く」までの作品では「アニマルハウス」と「サボテン・ブラザース」以外の作品では全部確認出来ました。それ以降は観ていない作品もあるので不明です。
私も初見は小学生の頃、テレビ放映でした‼️
冒頭の夜の山道で襲われるシーン、友人の亡霊が現れるシーン、ベッドシーン、そして狼男への変身シーンに度肝を抜かれたことを覚えてます‼️特に変身シーンは今観ても凄いですよね‼️そしてベッドシーン‼️ジェニー・アガターの美しさにホントにドキドキしました‼️多分、私が初めて観たベッドシーンは今作か、「ターミネーター」のどちらかだと思います