大いなる幻影(1937)

劇場公開日:2018年2月3日

大いなる幻影(1937)

解説・あらすじ

ジャン・ルノワールが第1次世界大戦下のドイツ捕虜収容所を舞台に様々な国籍や年齢、階級の人々が繰り広げる人間模様を描き、外国語映画として初めてアカデミー作品賞にノミネートされるなど世界的に高く評価された反戦映画の傑作。ドイツ軍に撃ち落とされ捕虜となったフランス飛行隊のマレシャル中尉とド・ボアルデュー大尉は脱走を繰り返し、脱出不可能とされる古城の将校捕虜収容所に送られる。そこで所長をつとめるのは、かつて2人を撃ち落としたドイツ貴族ラウフェンシュタイン大尉だった。同じ貴族階級のド・ボアルデューとラウフェンシュタインは親交を深めていくが、マレシャルたちの新たな脱走計画は着々と進められ……。ジャン・ギャバンが主演をつとめ、サイレント映画時代の名匠エリッヒ・フォン・シュトロハイムがラウフェンシュタイン役で圧倒的な存在感を見せた。2018年2月から、デジタル修復版が全国順次公開。

1937年製作/114分/G/フランス
原題または英題:La Grande Illusion
配給:川崎市アートセンター
劇場公開日:2018年2月3日

その他の公開日:1949年5月21日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第11回 アカデミー賞(1939年)

ノミネート

作品賞  
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映画レビュー

4.0 【”人道主義を胸に敵と接す。”今作は第一次世界大戦時、捕虜となったフランス将校とドイツ将校との交流と、逃亡したフランス将校を匿うドイツ人母娘の姿を通し戦時でも人道の心を持つ大切さを描いた作品である。】

2025年10月8日
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鑑賞方法:VOD

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■第一次世界大戦。マレシャル中尉(ジャン・ギャバン)とローゼンタール中尉(マルセル・ダリオ)とド・バルデュー大尉(ピエール・フレネー)はドイツ軍の捕虜となる。
 だが、ド・バルデュー大尉は貴族の為、3人の間には溝が生じていた。
 そんななか、所長のフォン・ラウフェンシュタイン大尉(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)は敵国の人間ながら、彼らを不運な戦士として食事に招くのである。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・第一次大戦が舞台なので、ジュネーブ条約は勿論ない。だが、フォン・ラウフェンシュタイン大尉がド・バルデュー大尉たちに話しかける言葉は敬語である。
 ましてや、暴力を振るうシーンは一切ない。

・それでも、マレシャル中尉とローゼンタール中尉は、仏蘭西に帰るために、何度も脱獄を決行するのである。
 或る晩、ド・バルデュー大尉は二人の囮となって、分かり易い屋根の上を走り、二人を逃がし、フォン・ラウフェンシュタイン大尉の銃弾に斃れるのである。
 ベッドの上のド・バルデュー大尉を見舞うフォン・ラウフェンシュタイン大尉が掛けた言葉。”すまん。足を狙ったのだが・・。””あんな、夜では仕方がないよ。”と言い、銃弾を腹に受けたド・バルデュー大尉は亡くなるのである。

・マレシャル中尉とローゼンタール中尉が逃亡するシーン。
 二人はドイツ人女性エルザ(ディタ・パルロ)が、小さな青い眼の娘ロッテと暮らす家に逃げ込むシーン。エルザは二人に食事を与え、ドイツ兵がやって来ても二人の事を告げない。ロッテの夫は戦死しているのに。
 そして、別れ際にマレシャル中尉は彼女に言うのである。
 ”戦争が終わったら、迎えに来る。”と。

■現況下、或る国は敵国の子供を攫い、洗脳教育を行い、或る国は救援物資が枯渇し、民が飢える中、砲撃を止めない。人道主義の欠片も無い行為を行っている。
 勿論、この二国を統べる男は、国際法違反で起訴されているが、敗戦しなければ罪に問われる事はないであろう。
 ジュネーブ条約が発足した理由は、第二次世界大戦時に余りに非人道的な行為が全世界で起きたからであるが、人類の人道主義の心は文明が栄える程、荒廃してきている気が今作を観ると思ってしまうのである。

<今作のラスト。
 マレシャル中尉とローゼンタール中尉は中立国、スイスに逃げ込む。その際にローゼンタール中尉は”国に戻っても、又、兵士になるだけだ。”と言うが、マレシャル中尉は”国境なんて、人間が作ったものだ。”と言い放つのである。
 今作は第一次世界大戦時、捕虜となったフランス将校とドイツ将校との交流と、逃亡したフランス将校を匿うドイツ人母娘の姿を通し、戦時でも人道の心を持つ大切さを描いた作品なのである。>

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NOBU

3.5 ヨーロッパ貴族のプライド

2024年3月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

古い映画。当時としては、かなりよくできた映画だったろう…。収容所の様子、貴族の意識など、一度見ておいてよかった。

大尉の気持ちは収容所でも<大尉>で、最後まで命を張って部下の面倒を見たのは感動的だった。そういう意識、義務感は、生まれたときから養った貴族としての意識からくるのだろうか。また貴族同士が国境を隔て互いを理解し合い、気を使い合っているところがおもしろい。<ヨーロッパ>を少し覗くことができた気分。。

ドイツ女性が出てきた箇所は悪くないけど、全体から見ると気が散った。男同士の渋い話だけで十分に思えた。

マルシャルは主人公としては陰が薄れてしまってような。二人の貴族のほうがカッコよく思えてしまう。なので、残念ながらジャン・ギャバンという俳優のよさはあまり感じられなかった。

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あまおと

3.0 欧州の階級社会は複雑じゃ

2024年2月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

名画100選とかで必ず出てくるのと題名から「嵐が丘」みたいな文学作品の映像化とばかり思ってたら捕虜収容所ものとは。脱走を繰り返す主人公達だが出自の違いから必ずしも一枚岩では無く、「大脱走」のような固いチームワーク感は見られない。むしろ同じ貴族出ということで敵の収容所長と友情が芽生えるのだから欧州の階層意識はよく分からない。大尉が2人を逃すために囮になったのも、仲間のためというより滅びゆく貴族の矜持みたいなものだったのか。そう言えばこの大尉と収容所長、時折英語でやり取りしていたようだが、あれはどういう設定なのかな?貴族の公用語は英語?
この騎士道精神溢れる第一次大戦下のドイツ人が30年後(この映画制作の数年後)には捕虜を大量虐殺するのだからまさに優雅・平和な時間など幻影に過ぎぬということですな。

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あっきゃん

5.0 それは大いなる幻影だ・・・

2023年6月4日
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泣ける

笑える

興奮

捕虜収容所モノの傑作としてはビリー・ワイルダー監督の「第十七捕虜収容所」、スティーヴ・マックイーンの「大脱走」などがありますが、この作品が他の作品と違うのは敵である将校同士の友情を描いているという点ではないでしょうか。ドイツ軍と捕虜であるフランス軍の将校が、同じ貴族出身と言う立場から、敵味方を超えて友情で結ばれる。そして脱走に成功したフランス兵は、ドイツ人女性に匿われ愛が生まれる・・・人種や国籍を超えた友情、愛情が素晴らしく感動的に描かれております。このフランス兵は終戦後、ドイツ人女性と再会できたのかな?それこそ大いなる幻影なのかもしれません。恐ろしい社会情勢が続く現代、たくさんの人々が観なければならない映画ではないでしょうか

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