「認められたい孤独な若者」オー! talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
認められたい孤独な若者
若い頃からベルモンドが深い内面も演じる俳優であることを示している映画です。最初はなんとなく暗い印象で陽気で明るいベルモンドではなかったのでどう捉えていいのかわかりませんでした。でも4回見て自分なりに身に沁みる映画になりました。評価も上がりレビューも書き換えました。
理解者の一人である新聞記者はフランソワを単なる「悪ガキ」と評する。レース事故は親友とのほんのちょっとの接触が原因なだけで故意ではないことを説明したい。自分のドライビングテクニックも見せてやりたい。確かに悪ガキ。
ベネディットは美しく服も家も黄色い車もすべて素敵。フランソワもお洒落でコートも煙草も一流品。ネクタイは372本持っている。1年365日+1週間分。お洒落で流血嫌いのフランソワをネクタイの新聞広告でおびき寄せ追い込んだのは警察だ。警察がマスコミをてなずけて使う手法は昔から。
ヨーロッパやアメリカは銀行強盗が普通によくあるんだろうか?逃亡に不可欠なのが優秀ドライバー、強盗仲間は替えた方がいい。この映画と「ベイビー・ドライバー」で知ったことだ。脱獄方法も頭いい。ヨーロッパの刑務所はどこでも同じ構造なんだろうか?長方形の建物で数階建てで天井が高く真ん中が吹き抜け、ぐるりと廊下でそこに各部屋(この映画では独房ではない)が並んでいる。
恋人に対してモデルの仕事に言いがかりをつけるフランソワ。彼女は売れっ子でファッション雑誌の表紙を飾り街の壁にもポスターが沢山貼られている。一方、自分は彼女を招き入れるような所に住んでもいずレーサーの振りをして嘘をついている。そういうフランソワ=ベルモンドを見て辛く悲しくなった。若い時によくある劣等感と悔しさ。認めてもらいたい思いと自意識過剰でいっぱい。
ルパンだ、カポネだと書かれた新聞を何部も買って、自分の写真とリード文の切り抜きを部屋中に貼りまくるフランソワ。自分の横顔と拳銃を手にする姿を鏡に映すフランソワ。まるで「タクシー・ドライバー」のデニーロだ。
ピアノメインのメロディー3つがとても良かった。1つは緊迫感、2つ目は孤独と苦しみ、そして3つ目は明るさ。見れば見るほどどんどんいい映画になっていく。(2021.8.3.)
お返事ありがとうございました。
>「ベルモンドは若い時も年とってからも子どもっ気が抜けない憎めない人です。亡くなった時、国葬されたのもよくわかります」
まだ数作しか見ていませんが、これは解ります。本当にチャーミングな人ですね。
正直、顔のつくりはアランドロン氏のほうが”美形”と言いたいのだけれど、ベルモント氏は目が離せなくなる。子どもっぽいのに、頼れる親父という面も持っていて。たくさんの方が魅了されるのもわかります。
映画の出来は別として。
『大頭脳』なんて、あきれるほどのコメディですが、最後まで見てしまいます。あれだけの、癖のある役者が集まっていても、他の人に食われるでもなく、他の人を食ってしまうのでもなく、ベルモント氏を触媒にして、妙な調和がすごいです。
コメントをありがとうございました。
まだ、ベルモンド氏の代表作と言われている映画を観ていないのです。見る順番を間違えたみたいです。そちらを見てからこの映画を観たら、talismanさんのような評価になると思うのですが、今のところ★3つです。
ここでの”ルパン”は、初代アルセーヌ・ルパンですよね。でも、日本人の私は『ルパン三世』を連想してしまうのも、この映画には気の毒なことです。
そして粋がっているけれど、蜘蛛の巣にかかった虫のようなオー!がなんとも閉塞感も感じてしまい、評価が上がりません。
『タクシードライバー』確かに!年代的には、『タクシードライバー』がオマージュしたのでしょうね。