劇場公開日 1999年4月17日

「NSAという化け物について」エネミー・オブ・アメリカ お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0NSAという化け物について

2020年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

NSAによる個人のプライバシーへの侵害の酷さは、2013年の初夏に、NSAハワイ支局の責任者(スノーデン)による内部告発によって、ようやく一般にも知られるようになりました。

プライバシーに鋭敏な人なら、アメリカとの国際電話の通話はすべてNSAが盗聴していることを知っているはずです。
しかし、実は日本国内の電話の会話も、一旦グアム島に光ケーブルを陸揚げし、そこから再び日本の目的地につなげるという運用によって盗聴されています。

アメリカに言わせると、それは「外国と米国(グアム)間の通話」であり、したがって盗聴は「合法的」だ、というわけなのですが……。

それはともかく、今から23年も前に作られた映画ですが、渾身の力を込めてNSAという化け物を告発したのがこの作品です。

映画は、NSAのエージェントによって個人情報保護派の国会議員が暗殺され、それがこの国に無数に仕掛けられている無人カメラの一つに撮影されていたところから始まります。

NSAエージェントが言い放つ言葉「国民にプライバシーなんて必要ない。頭の中だけに存在すればそれだけで十分だ」など、この映画は名言の宝庫でもあります。

最初から最後まで警鐘を鳴らしっ放しの映画ですが、エンターテイメントとしても最高級なので、何度観ても飽きません。

エンディングでCNNの番組「ラリー・キング・ライブ」が登場し、ラリー・キング本人がこう言います。
「いったいプライバシーと国家権力の間のどこに線を引くべきなのか。少なくともお前ら(国家権力)には、我が家に立ち入る権利はない」

このような強い主張を実名で行うことが許されていた時代が、わずか23年前にはアメリカにも存在していたのですね。

映画が警鐘を鳴らしていたプライバシー侵害の、ありとあらゆる手段と手口と「特に、法構成」とが、911テロを契機として、今ではすべて現実のものと化してしまったことに、驚愕するしかありません。

補足ですが、この映画のNSAの悪役が、劇中で、誕生日=9月11日とされているんです。
911テロが起きる3年前に作られた映画なのですが、この暗合。

愕然となりました。

お水汲み当番