「本作はタイトル通りスコセッシ監督が、真正面から男女の恋愛に取り組んだ映画だったのです」エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本作はタイトル通りスコセッシ監督が、真正面から男女の恋愛に取り組んだ映画だったのです
中盤までは、退屈な映画でした
なんなんだと、スコセッシ監督が何を撮りたいのかよく分かりませんでした
当時の衣装の再現具合、宴席の豪華な料理を正確に再現する
そんなものを撮りたかったのでしょうか?
100年以上前の女性は自由には生きづらい時代であったと言いたいだけの映画なのでしょうか?
そんな底の浅い映画をスコセッシ監督が撮るわけないとしばらく辛抱が必要でした
それが後半に入ると、物語は熱を持ち始めて、終盤には食いつくように観ていたのです
イノセンスとは純真無垢のこと
誰を指しているのでしょうか?
メイ?
実は違っていました
イノセンスなのは主人公ニューランドとエレンだったのです
美しい若い花嫁を娶とろうとしておきながら、忘れられない女性がいる男
愛の無い結婚を続ける無意味さを知る女
いつしか二人の間にいつの間にか強力な磁力が生じてしまったのです
しかし結婚していながら別の異性を愛すること
それは不倫です
二人は結婚していながら別の異性を愛しています
キスだけで肉体関係はないのですが、それでも不倫だと非難されるでしょう
しかし、この二人はイノセンスだったのです
結局、ニューランドは真面目に働き、妻と家庭を第一にして、息子を立派に育てあげ、いつしか55歳の老人となります
その心の中には別の女性への愛情が消えずに残ったままで
エレンもまた、彼との恋愛を諦め愛の無い結婚に戻り、いつしか老女になっているのです
ではタイトルのエイジとは?
1870年代の当時のことでしょうか?
それとも、主人公がエレンに出会う前までの頃のことでしょうか?
いや、愛し合いながらキスだけで別れお互いの結婚生活を続けた何十年という歳月のことでしょうか?
たぶんこれら全部に掛かっているのでしょう
邦題の「汚れなき情事」はイノセンスを裏返した上手い付け方とは思います
しかしエイジの部分のニュアンスが抜け落ちています
だから原題も邦題に残したのでしょう
つまり本作は、タイトル通りスコセッシ監督が、真正面から男女の恋愛に取り組んだ映画だったのです
3階の窓に見えるエレンと覚しき人影を観るだけでその場を立ち去る主人公の後ろ姿
これこそイノセンスそのものです
感動で胸が震えました
観終わったあとの後味は「マディソン郡の橋」に似ています
あちらは1995年の公開、クリント・イーストウッド監督作品で、こちらは1993年の作品
ですから本作の方が先の公開作品になります