栄光への脱出のレビュー・感想・評価
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パレスチナ、ジャマイカ、ニューカレドニア、そしてゴジラ-1.0 なにか地下深くの水脈でどれもこれもつながっている
栄光への脱出
1960年公開
3時間半もあるインターミッションが入る程の超大作です
そして興行もまた当時は超大ヒットだったそうです
70㎜シネマスコープの明るく美しい画面が映画的快感を起こします
まるで21世紀にIMAXで撮影したかのような現代的なメリハリの効いた絵が撮れています
カメラも照明もべらぼうに上手いです
中東ロケですから、明るい映像は当たり前のようで、却って日差しが強過ぎて画面は潰れていまう筈です
それを映像は超強力な照明を使ってねじ伏せています
その証拠に青空がそのまま青く撮れています
照明が負けていると白い空にしか撮れません
夜のシーンも本当に夜間に撮っていますが照明の当て方が名人級で人物、建物はハッキリと見え、暗闇はあくまで暗く沈んでいるのです
カメラもレンズの味が快感を呼ぶ絵作りが随所にあり、美しい構図とともに「これが洋画だ!」という喜びを感じます
そして劇伴が素晴らしい
アカデミー音楽作曲賞を受賞した主題曲は、70mmシネマスコープのスペクタクルな映像に負けない雄大で豪華なオーケストラ音楽です
その他の音楽もどれもこれも美しく豪華なのです
これもまた「これこそ映画音楽だ!」という喜びを感じます
多くの映画音楽全集にも収録されているのは当然の永遠の名曲です
忘れていた洋画のゴージャスな世界がここにあります
監督はオットー・プレミンジャー
彼はウクライナ西部生まれのユダヤ人
長じてウィーンに出て演劇に目覚めますが、ナチスドイツの台頭を嫌って1935年に米国に移住してきたそうです
最初はブロードウェイの俳優をしていたりだったそうですが、1940年頃から映画界に関わって監督にもなります
でもあまり有名でもなく有名作品もありません
しかしどれもこれもタブーに挑んだ意欲的な作品ばかりのようです
本作もまたイスラエル建国というユダヤ人問題の根源に挑んだ作品です
オーストリア生まれで一つしか年の違わないビリー・ワイルダー監督の1953年の名作「第十七捕虜収容所」にドイツ軍の収容所長役の俳優として出演していたことを後で知りびっくりしました
ポール・ニューマンは、英軍将校役です
しかしてその実体はユダヤ人地下組織のリーダーです
当時パレスチナは大英帝国の委任統治領でしたが、第一次大戦の時の空約束でパレスチナ人には独立を、ユダヤ人にはイスラエル建国の二枚舌を使ってしまったつけが回りイスラエル建国を目指してパレスチナに植民しようとするユダヤ人とパレスチナのアラブ人の争いで板挟みとなり苦しんでいました
ユダヤ人をパレスチナに行かせれば争乱が酷くなるばかりなので、パレスチナに向かおうとするユダヤ人はキプロス島の収容所に閉じこめています
とはいえナチスドイツみたいな収容所にならないように人道的に配慮しようと四苦八苦しています
そこからユダヤ人を脱出させてパレスチナに向かわせるというのが前半
脱出に使うボロ貨物船が「エキソダス」号です
後半はそのパレスチナがどうなるのかを描きます
1947年11月の国連総会の議決により英国の委任統治領からのパレスチナ分割が認められアラブ人国家とユダヤ人国家の樹立が認められます
しかしその議決の結果どうなってしまうのか
それは2024年テレビでニュースを見ればわかります
つまり「栄光への脱出」とは、単にキプロス島からの脱出ではなく、イスラエル建国そのものを指すのだという物語です
脚本はダルトン・トランボ
彼は赤狩りの標的にされ1947年に禁固刑になった人です
その後は映画界から追放された人物です
でも実は偽名を使って脚本を書いていたそうです
あの不朽の名作「ローマの休日」や「スパルタカス」を書いていた脚本家と同一人物であることを今回始めて知り仰天しました
プレミンジャー監督は超大作の原作の脚本化に難航して彼の腕を見込んで当初の脚本家に代えて彼を起用したそうです
その仕事を見事に応えたトランボに対して監督は脚本家はトランボであると公表して彼の映画界復帰に報いたそうです
これによって映画界の赤狩りも終わったのです
これもまた「栄光への脱出」です
本作ではポール・ニューマンがモーゼ的な役割に描かれるべきところを普通の人間として描かれています
彼と米国人看護婦のキティ、ユダヤ人の美少女とその恋人の二組のカップルの恋の行方を絡めて上手く映画に仕立てあります
それはたった一人の英雄の物語ではなく、パレスチナのユダヤ人全員が英雄であるという方針で貫いているからなのだと思います
ポール・ニューマンはハンガリー系ユダヤ人なのでかなり気合いが入っていたそうですが気難しい監督と衝突して通り一変の演技で終始しています
ですが、それもまた脚本の狙いどうりモーゼのような超人的英雄ではない普通の人間であるということを表現していることになっています
監督は彼を20世紀のモーゼとして撮る気は無かったのだと思います
いずれにせよ彼は本作でスーパースターとなり、翌年は「ハスラー」でそれを不動のものにするのです
本作の舞台はキプロス島から始まります 時は1947年
そう、ゴジラ-1.0と同じ年です
つまり戦後から21世紀の現代にまで続くこの世界はこの1947年という年にあらかた形作られたのだということです
この符合にまず仰天しました
そして2024年の今
連日のようにガザ地区を巡る紛争の悲惨な有様が報道がされています
本作のエンドマークと現代までの77年間がまるで無かったかのように
一続きの物語のようなのです
映画はまだ続いているかのように
77という数字に今気がつきまました
新約聖書には、イエスはペテロに人を77回許すように言われたとのくだりがあるそうです
つまり今年は辛抱の限度がきたという年なのです
なんかオカルトですが、世界の大多数を占めるキリスト教徒の心理の奥底にあるのかも知れません
確かに世界がこれまでとは違う世界についに変わろうとしているのだということはキリスト教徒でもユダヤ教徒でなくとも感じます
本作の原題は「エキソダス」
2024年の映画「ボブ・マーリー:ONE LOVE」で本作の主題曲がひょんなことで流れ、それをきっかけに彼の名曲「エキソダス」が生まれるシーンがあります
こちらはカリブ海のジャマイカが舞台で時代は1970年頃から始まります
そして2024年、南太平洋のニューカレドニアの争乱が連日ニュースに流れます
ジャマイカとニューカレドニア
全く違うようで同じことのようにも思えます
ニューカレドニアも調べて見ると1947年は今日の紛争につながる因縁のある年だったようです
パレスチナ、ジャマイカ、ニューカレドニア、そしてゴジラ-1.0
なにか地下深くの水脈でどれもこれもつながっている
そんなふうに思えてくるのです
本作の物語はパレスチナ問題がどのように始まったのかを教えてくれる映画です
そしてユダヤ人、イスラエルへの理解を得る為のプロパガンダ映画です
身も蓋もありませんが実際のところはそうです
それでもパレスチナ問題を何も知らないよりマシです
連日のガザの惨状、ラファへのイスラエル軍の侵攻
その根源は一体なになのか
様々なメディアの角度をつけた偏向に誘導されず、自分の頭で考えてみるきっかけに本作はなると信じます
例えプロパガンダ作品であっても大変に有意義であると思います
この頃のイスラエル共和国は『ハティクヴァ』が似合う国だった。
プロパガンダそのものになっている。これで、アメリカ合衆国はイスラエル共和国を支援している事を実資表明した。
それは兎も角、私がこんなプロパガンダ映画を何故高評価するのか?
第一に脚本家や役者の反骨精神を評価してのことなのだが、この映画公開の後の1962年に『アラビアのロレンス』の封切りがあった。『アラビアのロレンス』はイギリスから見たアラブの話であった。それに対して、この映画はアメリカ人から見たユダヤ人と言う事になる。つまり、全く逆のプロパガンダ映画とも言える。さて、そう言った影響もあってか、この映画は一般的にはあまり評価はされなった。しかし、一方の『アラビアのロレンス』は賞まで取ってしまう評価のされよう。だが、イデオロギーや歴史的な解釈も含めて、この二つの映画の力量や質に雲泥の差があると私は解釈した。何故なら、どちらも誇張された作られた戦争活劇だと思うが、この映画はただの英雄を描いていない。ポール・ニューマン役は英雄でないし、殉死した人達に対する英雄視も強調していない。シオニズムに扇動されたユダヤの民のナショナリズムがみなぎっている。白色テロと言うよりも『アルジェの戦い』の様な植民地からの独立闘争として捉える事が出来る。立派なナショナリズムなプロパガンダ映画だが、1960年の時点では仕方ない事だと私は判断した。
牢屋からの脱出はマカロニ・ウェスタンの『南から来た用心棒』やフェルナンド・サンチョの活躍するメキシコ革命を題材にしたマカロニ・ウェスタンに大いに影響を与えていると思う。と気が付いた。なぜ今頃申すか?実はこの映画初見だった。我が親父がこう言った偏向映画は見るなと言っていた事を思い出した。今になっては中東の元凶かもしれないが、当時のイスラエルとパレスチナの関係では仕方ないと私は判断する。それを踏まえて評価したい。
さて、また、
感心したのはエキストラの数である。一万人以上はエキストラとしてこの映画に参加していると思う。一つの映画の為だけにこれだけのエキストラを揃えた演出はさすがアメリカ資本と感心した。
傑作なんじゃないかなぁ?
ニューマン君随一の超大作
3時間半ですが、なかなか面白い。
構図がカッチリ決まってて格調高いです。雄大な景色をもう少し入れたらロレンス並みになったのに。
最後の方は、ユダヤ寄りのハリウッドの意向なのか、少し説教くさいのが気になりました。
捕虜の脱走のお話かと思ってました!
2020年10月4日
映画 #栄光への脱出 (1960年)鑑賞
1947年にホロコーストからの生存者を乗せてイギリス委任統治領パレスチナに向かおうとしてイギリス軍に制圧された不法移民船エクソダス号をモデルとした物語
脱出してからの話が意外と長い
この映画で現在まで続く中東問題の始まりが何となくわかる
ポール・ニューマン・・
ポール・ニューマンを有名にした映画らしい。役はユダヤ人地下組織のリーダーで名前はアリ。ストーリーは第二次世界大戦後のイスラエル建国の物語。収容所にいたユダヤ人は国家の国土がなかった。イスラム教のアラブ人やパレスチナを統治する英国とは戦いの歴史がある。戦後70年以上経った現代でも中東問題は、複雑でお互い闘っている。アメリカとイスラエルは同盟国になっているが、アメリカの介入が問題を複雑にしているのでは!?
大変さは伝わるけど話が分り辛い
総合:65点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )
三時間半の大作だが、題名にある脱出の話は最初の三分の一程度だった。大半はイスラエル建国にまつわる話を描き、ユダヤ人のポール・ニューマンが主人公を演じる。
しかしイスラエルの歴史について知らないと理解が深まらない部分が多くて、当時の状況に加えてハガナとかイルグンとかの組織が出てきて物語についていくのが大変だった。無理押しな建国に民族対立に無茶苦茶な政治状況が重なり、武力闘争もある。それなのに政治の大局の流れと主人公側の組織や行動が一致していない。大変な状況なのはわかる。だけど何を描きたいのか分り辛く、話に入りこみにくかった。
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