「スピルバーグにできることは多分あまりなかっただろうね。」ウエスト・サイド物語 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
スピルバーグにできることは多分あまりなかっただろうね。
何せ70mm用キャメラをぶん回して撮影したフィルムだし、1961年の作品とはいえオリジナルからしてステレオ音声だし、音楽はバーンスタインだし、これをリメークするというのはどこに手を付けるのよっていう印象です。
今回久しぶりに観て、前半の群舞シーンが割と平板かなという印象を受けた。カメラの使い回しに制限があってカメラ位置をあまり色々動かせなかったのだろうけど。
ただ、後半に入って、楽曲でいうと「Cool」あたりからドラマが一気に緊迫感をはらんできてショットもつられて凄みを増してくる。
そもそもこれはMGMのミュージカルです。ストーリーがつまんないとか、2日間で命がけの恋愛ストーリーが始まり終わる感覚が現代人には理解できない、との評価もあったが、そもそもMGMミュージカルは単純なボーイミーツガールのストーリーに素晴らしい楽曲とダンスが乗っかるスタイルです。そしてジェローム・ロビンスの映画デビュー作「On the Town」(踊る大紐育)がまさしくそうだったように主人公たちのOne Day、1〜2日間で起こる出来事をテーマにすることが多い。だから、この作品もMGMの伝統にのっとってボーイミーツガールから始まるわけだけど、そこはロミオとジュリエットが下敷きとなっているだけに悲劇的な推移がすぐ訪れる。
「クール」以降の悲劇性の畳み掛けが凄いのです。ドラマとして見応えがある。さすがに達人ロバート・ワイス。ロミオとジュリエットは二人とも死ぬのだけど、この映画では恋人たちの片方しか死なない。悲劇性という意味ではそちらの方が深い。だから最終ショット、遠景での長回しで登場人物が一人一人去っていくところ、カタルシスをまさしく映像化したような場面に毎回、息をのむのです。
