「ウディは母親コンプレックス?」インテリア あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
ウディは母親コンプレックス?
1978年アメリカ映画。93分。今年36本目の作品。ウディ・アレンにとって初のシリアスドラマ、らしい。さらに本作でのウディは監督と脚本に集中しています。
内容は;
1、娘三人が自立した家庭の夫はインテリアデザイナの妻に「試験的別居」をしようと持ちかける。
2、それから妻の体調は一気に悪化し、追い打ちをかけるように夫は別の女と再婚しようとしている。
3、両親の狭間に立たされた娘たちは、どちらの側につくこともできない。
本作のテーマを平たく言えば「家庭の絆の崩壊」ドラマ。家庭のために働き続けた夫は娘の独立を機にもっと自分らしく生きる方法を模索し、愛人をみつけ、そして妻にやんわりと別れ話をもちかける。個人的にもそういう家庭、知ってます。
娘たちはみんな、じつはかなり前から冷え切っていた両親の夫婦関係を無意識に感じ取っていたのか、とてもドライな性格として育っている。だからいざ両親が別居しはじめても、娘たちの反応は実に冷ややか。
そして、この冷ややかさが本作の軸となっています。それまでのウディの作品にあった人間に対する愛情のまなざしは、本作では見事に消え去っています。たしかに本作はウディ作品の中でもかなりの異色作なのですが、それでもやはりウディのタッチなのです。
物語は最後まで観ると不条理きわまりない。そして、その不条理さはわたしたちの本質に潜む「無責任さ」から生じている。恐らく、これが本作のポイントだと思います。
終盤でウディはちょっとしたシェイクスピア的なタクトを振るい、家庭の絆を運命論的に演出しますが、それが不条理さと見事に対立してなんとも言えない気持ちになるんだな。
気持ちは沈むのだけど、知って良かったんだろうなって感じのメッセージでした。