「スピルバーグの残酷大陸。 純度100%の悪趣味で構成された、”Anything Goes”にもほどがあるシリーズ第2作☠️」インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
スピルバーグの残酷大陸。 純度100%の悪趣味で構成された、”Anything Goes”にもほどがあるシリーズ第2作☠️
探検家インディ・ジョーンズの活躍を描いたアクション・アドベンチャー『インディ・ジョーンズ』シリーズの第2作。
前作の1年前にあたる1935年のインド。インディと彼の助手を務める少年ショート・ラウンド、そして成り行きで行動を共にすることになった歌姫ウィリーの3人は、村から奪われた秘宝”サンカラ・ストーン”を取り戻すため、邪神カーリーを祀るというパンコット宮殿へと向かう…。
監督はスティーヴン・スピルバーグ。
○キャスト
インディアナ・ジョーンズ…ハリソン・フォード。
制作総指揮/原案はジョージ・ルーカス。
第57回 アカデミー賞において、視覚効果賞を受賞!
子供×残酷×悪趣味。これぞスピルバーグ節!!
第1作を遥かに上回るイカれ具合。ファミリー向け映画ど真ん中といった具合の冒険活劇なのに、その内容はどこまでも野蛮。特に差別的とも取られかねないゲテモノフルコース料理には、インド人もさぞやビックリした事だろう。
本作がきっかけとなり「PG13」という新たなレイティングが設けられたという事だが、それにも納得のちびっ子トラウマ製造映画であります。
本作最大の特徴。それはストーリーがない!
観る映画を間違えたかな?と思ってしまう、煌びやかなミュージカルシーンから始まる本作。まんま『007』のノリで展開される香港パートが終わったかと思いきや、怒涛の勢いを保ったまま何故か舞台はインドの山奥へ。そしてそのまま邪神の眠る魔宮での大冒険が始まる。
…いやわからんわからん💦ストーリーの展開に整合性が無さすぎるだろこれっ!!
前作はまだ物語に段階というものが存在していたが、本作にはそういうウェルメイドな匂いのするものは一切ない。ミュージカル→チャイニーズマフィア→雪山→ジャングル→猿の脳みそ→ゴキブリ→トゲトゲ罠…という具合に、まず見せ場だけを考え、そしてそれをただ数珠つなぎにしていっただけのように思えるあまりにも適当すぎるお話の運び方は、良くも悪くもインパクト絶大である。
新キャラのはずのショート・ラウンドくんは昔馴染みのように登場してくるし、インディとウィリーのロマンスには情緒というものがまるで無い。この2人の間には性欲しかねぇっ!
酷い脚本といえばその通りなんだけど、まぁ話が早いのは間違いないわけだし、かったるいパートを見させられるよりかは邪教信徒との戦いやトロッコでのチェイスをたくさん見せてくれた方が良い。どれだけ大予算が掛けられていようが、本シリーズはあくまでもパルプ・フィクション。この雑さも立派な構成要素の一つなのです。…多分。
相変わらずアクションの手数は凄まじい。1分に1回くらいの割合でドンパチがあって人が死ぬ。とはいえ、確かに血の気が多くて残酷で悪趣味な作品なのだが不思議と爽やかというか、描かれているバイオレンスは嫌な気持ちにさせるものではない。
ただの会話シーンでもその合間にギャグやビックリが仕込まれているし、キー・ホイ・クァン(オスカーを獲得するなど、近年まさかの大活躍!)やケイト・キャプショー(この後スピルバーグとまさかの結婚!)といった俳優陣の明るさが作品に華を添えている。おどろおどろしい魔宮の雰囲気とは裏腹な、驚きと楽しさに満ちた娯楽映画である。
…ただ、躁状態にも等しい異常なハイテンションが120分間ずっと続くので、ぶっちゃけ観ていてすごく疲れる。緩急がないので、観ていてだんだんと頭がボーっ…としてきてしまった。
そういえば『エイリアン2』(1986)を観ていた時も凄く眠たくなった。糖分を摂り過ぎると眠たくなるように、どうやら80'sアクションのカロリーの高さは睡魔を呼び寄せるようだ。
以下は作品の良し悪しとは別の、ちょっと気になった点。
冒頭のインディは誰がどう見ても完全にジェームズ・ボンドを意識しているわけだが、アクションの内容は凄くジャッキー・チェンっぽい。あのクラブ「ケノービ」…じゃなくて「オビ・ワン」からの落下は『プロジェクトA』(1983)の時計塔シーンのオマージュ?
そして、魔宮に潜り込んでからのテンポ感や上下のアクション、キャラクターのリアクションが『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)にそっくりだと思ったのは自分だけだろうか?
『もののけ姫 in U.S.A.』(2000)というドキュメンタリーでも語られていたように、80年代初頭、宮崎駿は『リトル・ニモ』という日米合作アニメの制作のためアメリカに滞在していた。この時期、プロデューサーの藤岡豊は宮崎駿を売り込むために『カリオストロ』をハリウッド関係者に見せまくっていたらしく、後にディズニー/ピクサーのチーフ・クリエイターとなるジョン・ラセターもこの時に『カリオストロ』を初鑑賞し、そのクオリティの高さにぶっ飛んだという。
おそらくスピルバーグもこのタイミングで『カリオストロ』を観ているはず。この映画の後半のアクションはスピルバーグ流宮崎演出なのだ!…多分。
前作とは少々、いや大分テイストが違う作品である。映画というよりはアトラクションに近く、正直完成度は前作の方が高いと思うのだが、本作特有のクセも捨てがたい。日本国内ではこの作品がシリーズで1番人気があるように思うのだが、それも頷けるインパクトの強さである。
まぁ悪趣味の極みのような作品であり、現代的な価値観で判断すると色々とアウトな映画なのだが、それもまた今となっては貴重か。ケイト・キャプショーが”Anything Goes〜♪”と高らかに歌い上げているが、正に「なんでもあり」な一本。
…そういえば、結局最後まで時代設定を前作の1年前にした意味がわからなかった。いや、ショーティはどこに行っちゃったのよ?まさか死…いやまさかね…。