「すれ違いを止めるために抱きしめる」いますぐ抱きしめたい abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)
すれ違いを止めるために抱きしめる
ウォン・カーウァイ監督デビュー作品。
デビュー作からおしゃれでかっこいいとかもう最高です。
マフィアの抗争での男の友情パートと恋愛パートのアンバランスさも全く問題なし!!!若者の刹那的な生が十全に描かれているということです。
アンバランスであることも「すれ違い」が起こっているからだ。
マフィアの抗争では、対抗するグループの間で仲違いが生じているわけで、アンディと弟分との関係もそうだ。彼らは分かり合えない。だから喧嘩になってしまう。
アンディとマギーの恋愛もそうだ。彼らははじめ親戚でしかなく、彼女の通院のために関わっているだけだ。そしてアンディはマフィアに関わる危険な男であり、マギーは病気がよくなったら地元に帰ってしまう。マギーの美しさによって二人が接近しようとも、抗争が彼らを断絶させる。途中で映される2台のバスのすれ違いが彼らの運命を暗示しているようだ。
けれどアンバランスは「すれ違い」を生じさせつつも、互いを補う「助け合い」にも転じる。アンディは弟分を何とかして助けたい。そのために抗争に巻き込まれてしまうわけだが、原理は助け合いだ。
マギーとの恋愛は、当初は病気であるマギーを看病するようにみえつつ、実はアンディがマギーに食器を調えられたり、料理をつくってもらうなどケアされる側であることに可笑しさと釣り合いがある。そして彼らがランタオ島で平穏に暮らすための助け合いが彼らを結びつけるのだ。
しかしその助け合いも水泡に帰するように、悲劇と化してしまう。アンディは弟分の一大奮起の襲撃に参戦し返り討ちに遭ってしまう。死んでしまったらマギーとの未来はない。あまりにも悲しい結末だ。けれどその悲しさは若者の生の儚さなのかもしれない。
他にも抗争によるアクションシーンは、食べ物とか瓶などが盛大にひっくり返されて見応えがあるし、アンディとマギーがランタオ島で再会し、アンディがマギーの手をひいてキスをすることを1カットでみせるのは凄い。
物語もルックも素晴らしい。みることができて本当によかった。