いぬ(1963)のレビュー・感想・評価
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つ・・い・・たて
とにかくジャン=ポール・ベルモンドの存在する立ち位置に確信すら持てないまま物語が進んで行き穿った見方をしているから全ての事情や辻褄を合わせた謎が解き明かされる場面でも疑いや混乱は避けられない、登場人物が入り乱れてセリフ上で名前が飛び交い整理出来ない現状がノイズになりながら、映像に映し出された全てを素直に受け入れて鑑賞出来たなら複雑な物語と感じる必要も無いのだが!?
煽ったようなワザとらしい演出は皆無で至ってシンプルな物語構成に惹きつけられながら勝手に惑わされて、メルヴィルが描くハードボイルドな雰囲気を醸し出した、これぞフィルムノワールと納得の一本であるのは間違いない。
ひとことです言えば大人の映画です
1963年公開、フランスの白黒映画
フイルムノワールの傑作として名高い作品です
監督はジャン=ピエール・メルヴィル
本作の次の次の作品がフイルムノワールの金字塔「サムライ」になります
フランス映画を観たという満足感があります
恋愛ものの良い映画が山ほどありますが、ノアールものもまたフランス映画の醍醐味でしょう
冒頭、タイトルロールの間、鉄道ガード下の半地下の歩道をトレンチコートに帽子の男がポケットに手を突っ込んでただ歩いています
もうそれだけで心を鷲掴みにされます
映像のスタイリッシュさは半端ありません
映画の最初に帽子とは隠語で警察のいぬのことだとテロップがでます
そしてラストで撃たれて倒れた人物が被っていた帽子が床に転がるシーンで映画は終わるのです
音楽がまたお洒落
クールジャズが気づくといつの間にか薄く低く流れています
これが全編に渡って本作を支配しているムードです
拳銃を撃ち、女を殴り、走るシーンもあります
怒鳴るシーンもあります
だけども大変に抑制されているのです
一言で言えば大人の映画です
なんだか池波正太郎の「鬼平犯科帳」を思い出しました
彼は映画好きの作家で有名で、「フランス映画旅行」という著作もあります
代表作の「鬼平犯科帳」はもちろん時代劇ですが、本作と似た雰囲気が濃厚にあるのです
もしかしたら本作のようなフランス映画のノワールものが下敷きになっているのかもしれません
「鬼平犯科帳」は本作の4年後、1967年から連載がスタートしているのです
そして1964年の日本のフイルムノワールの傑作で篠田正浩監督の白黒映画「乾いた花」も思い出しました
その作品もまた本作から刺激を受けたように思います
シリアンのようにスコッチを飲みたくなりました
もちろんクールジャズの流れる薄暗いバーでゆっくりと
美しすぎるフィルム・ノワール
ジャン=ポール・べルモンド傑作選が開催中ということで、ずっと前にDVDを買って観るのを忘れていた今作を思い出した。
ということでべルモンド傑作選番外編ということで「いぬ」を鑑賞
ノワールを撮らせたら右に出るものはいないフランスの巨匠メルヴィル監督の割りと初期の作品。後期の代表作である「サムライ」「仁義」、遺作である「リスボン特急」ではアラン・ドロンを起用していたが、その前にべルモンドとも今作と「モラン神父」という二つの映画を撮っている。「モラン神父」も傑作だったが今作も凄い。これぞフィルム・ノワールのお手本だ
美しいモノクロの映像で雰囲気抜群
緻密なプロット
闇に生きる男たちの裏切りと友情
切なすぎるラスト
そして何よりべルモンド演じるシリアンの生きざまがカッコよすぎる。
フィルム・ノワールはやはり寒々しい白黒が至高
そして何より、突然やってくるカタルシスが素晴らしい。真っ当に生きていなくては絶対に天罰が下るということを観ている者に教えてくれる。しかし黒い世界でしか生きていけない不器用な男たちの哀愁が同情を誘うのだ。映画のジャンルとしては最高だ!
フィルム・ノワール
doulosとは帽子のこと。警察などで使われると、隠語で“密告者”の意味になる。前置きからはシリアンが“いぬ”なのかどうか、モーリスが疑うところがテーマなのだろう。しかし、会話に出てくる登場人物、地名、噂話が多過ぎて、人物関係がさっぱり掴めない。深く考えずに、シリアンとモーリスを中心に映像で楽しめばいいのだろう。
意外な人物が“いぬ”だった。それならそれで、途中の話をややこしくしないでくれ・・・ただでさえわかりにくいのに。で、やっぱり男の友情は大切ってことですね。
強烈なまでの白と黒の陰影が明かにフィルム・ノワールの特徴をしめしているのだが、代表作のなかにこの『いぬ』は入ってないようだ。
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