「悪夢的イメージの連続。映像化されたシュルレアリスム。」アンダルシアの犬 koukiさんの映画レビュー(感想・評価)
悪夢的イメージの連続。映像化されたシュルレアリスム。
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この映画はルイス・ブニュエルの監督デビュー作であり、サルヴァドール・ダリが共同監督を務めている。
アルゼンチン・タンゴが流れてくる中、ブニュエル自ら演じる男が登場し、空を見上げると満月に一筋の雲がかかっている。場面が変わり、あの悪名高い目玉を切り裂くシーンが現れる。
満月を眼球に見立て、雲を剃刀に置き換えたというのは一目瞭然で、ほかにも掌を這い回る蟻や、木箱から転がり落ちる人間の手首など、心が掻き乱される映像が続く。
しかし、そのショット1つ1つの意味を見出そうとしたところでそれはただの思い込みに過ぎない。
そもそも、ブニュエルとダリが本作を撮る際に決めたルールは唯一つであった。
すなわち、「合理的、心理的イメージを一切排除し、文化的な説明を成り立たせるような発想を受け入れぬこと」で、これはシュルレアリスムの定義と合致する。
その中でも特に有名な冒頭のシークエンスは、シュルレアリスムの最重要概念である"不気味さ"を強烈に表現した名場面といえる。
本作は誰が見てもその気味の悪さに耐え難くなってくるだろうが、次第に一貫性のなさ、破壊的イメージに(シュルレアリスムの原則に忠実にのっとっているのだが)ある種の心地よさを覚える。
かつてブニュエルはこういった。「愚かなる群衆は、実際には絶望的なもの、殺人への情熱的な訴えにすぎないものを「美」とか「詩的」だと考えた。」(ジョルジュ・サドゥール著「世界映画史」)
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