劇場公開日 1954年8月

偽りの花園のレビュー・感想・評価

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3.5俳優陣のアンサンブルが素晴らしい愛憎劇

2025年8月1日
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鑑賞方法:映画館

20世紀初めアメリカ南部の富豪ハバード家の三兄妹を中心に、愛憎が渦まく人間ドラマをワイラー監督が鮮烈に描きます。

前半、綿工場誘致で東部の実業家を招くシーン。贅沢な料理や酒、ピアノ演奏でもてなすのですが、長兄のベンや次兄の嫁のバーディは浮き足だってしまいます。そこはベティ・デイヴィス扮する妹のレジーナが手綱をしっかりと握ります。さしずめ現代だと、完璧なパワポ資料を準備し、誘致に向けた流れるようなプレゼンを行うといった感じでしょう。

それにしてもこの三兄妹の冷酷で強欲なこと。兄妹同士での腹黒い駆け引きは、薄ら寒さを覚えると同時に目が離せない程面白いです。
中でもレジーナの悪女ぶりは群を抜いています。病弱な夫で銀行家のホレースに「早く死ぬがいい」とのたまう時の、白塗りの表情の怖さ。いくら夫婦仲が冷め切っているとはいえ、ここまで無慈悲になれるのかと背筋がこおります。デイヴィスの後半生の数々の怪演に繋がる恐ろしさです。

悪に対する善なる存在として、娘のアレクサンドラが配されます。幼少期から母レジーナに支配されてきましたが、ラストでは遂に母と対決します。そう、本作は彼女の成長物語とも言えるのです。アレクサンドラに扮するテレサ・ライトの「ハリウッドのお嬢様」というキャラを方向付けた名演です。

ハーバート・マーシャルの病弱ながらも確たる信念をもった夫ホレース、パトリシア・コリンジの政略結婚結婚の犠牲者で精神的にやられてしまった義姉バーディ、馬鹿息子ぶりが甚だしいダン・デュリエら他の俳優陣のキャラも立っていて、どれもが素晴らしいです。

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