「The king of Dystopia」1984 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
The king of Dystopia
主演のジョン・ハートは“エレファントマン”の主演も演じていたというのを無知蒙昧的に知らなかったのは大変恥ずかしい限りである。
輪を掛けて、この原作者であるジョージ・オーウェルと“市民ケーン”のオーソン・ウェルズがゴチャゴチャになっているのも情けない限りである・・・ネットで調べてもこの二人を取り違える人はいないようなので、完全に脳の萎縮化が進行しているようである。
今作品は、題名だけは知っていたのだがNHK“100分でメディア論”において紹介されていた小説を、映画として観たいと思い立ったのがきっかけである。流石、ディストピアと言う概念をこれ程如実に表現してる空想社会、ダークファンタジー否、より現実性の高いプロットは、今作品が原点なのではと思うほどである。これでもかと人間の尊厳を踏みにじる全体主義の行く末を、大袈裟ではなくまるで方法論、教科書のように説明しながらのストーリー展開は、もはや現実社会の未来を先取りして見せているようで、寒気どころではない強烈なトラウマを植え付けてくる作品である。全く真逆の相反する言葉を繋げることで、人間の思考をバチバチとニッパーで切断するように、愛や自由を踏みにじる方策は心理学的にも人間の大事な核をエアクッションのプチプチを潰す如く、消去させてゆく。母親を喰い殺したと思っているネズミを、マスクと籠をくっつけたような拷問具で、主人公の心を抉るように拷問していくシーンはそれまでの数々の信頼の裏切りを見せつけられた後だからこその壮絶さを強く印象付けられる。“2+2=4”と言えない不条理や、戦争は国家間ではなく国内の階級間に対しての甚大なる有効性をもたらすことなど、本当に勉強させられることが多い、大変大事な作品である。学校の教材に絶対採用すべき作品であると強く感じるのである。