「映画史上最高のブラック・コメディの1つといえる。」生きるべきか死ぬべきか 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
映画史上最高のブラック・コメディの1つといえる。
ナチス侵攻のポーランドから、国外脱出を図る俳優一座を描いたコメディ映画。ノンストップで次々と騒動が起こり、最後まで見逃せない傑作だと思う。
ナチスの協力者という教授から、抵抗活動の仲間のリストを取り戻すため、俳優一座でニセのゲシュタポ本部を立ち上げ、ナチスを騙して国外脱出するまでを描いた、独創的なスクリューボール・コメディだ。
俳優一座の座長が、妻とポーランド空軍の中尉との不倫を知るのだが、この三角関係が、なんとも面白おかしい。ナチスの危機が迫る中で、ナチスをネタにした数々のギャグを交え、ユーモアたっぷりに描いている。
とても素早い展開で、無駄のない脚本。ドイツ軍のポーランド侵攻を、エネルギーにあふれたドタバタ劇に昇華している。ファシズムという題材を、こんなにまでカラッと、それでいて流れるように描いた、ブラックコメディの傑作だ。
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Gustavさんのコメント
2024年10月29日
瀬戸口仁さん、お気遣いのコメントありがとうございます。
私が敬愛するルビッチ作品を的確に簡潔なレビューでまとめておられて嬉しくなりました。多くの人に観てもらいたいのが正直な気持ちですので、取り上げて頂き感謝申し上げます。
戦前戦中におけるハリウッド全盛期の映画は、ナチスや戦争を題材にしてもコメディとかラブロマンスが前面に出ていた余裕がありました。「チャップリンの独裁者」(1940年)「カサブランカ」(1942年)と並んで、この作品の時代を映す真剣さに敬服してしまいます。