「実は愛の讃歌」イヴの総て 悠さんの映画レビュー(感想・評価)
実は愛の讃歌
今作は成功に魅せられ、夢見た少女が周りの人間を次々と不幸にしながら大成する話である。近年のヒット作に例えると『国宝』である。
二流の作品と比べ得ることもできないほどにこれは完成度が高い。
大河ドラマのように人生をなぞるだけではなく、今作は成功のなんたるかを端的に見せることに成功している。
まず、今作は授賞式から始め、これが栄誉の話であることを明示する。そして最後に授賞式を映すことで、シナリオの構造が綺麗な円環を結んだ。
成功の蜜と、その副作用が交互にやってくるこの苦痛の円環を抜け出せた今作唯一の人物はマーゴである。夫のビルとの愛情が唯一この円環から抜け出せることを可能にした。愛こそ本当の人生の甘美であることを表していた。
今作の主人公はイヴではない。イヴは名前の通りイーヴルである。悪役であるため黒い服をよく着ている。今作は成功者に黒い服を着せる。
今作が一貫して愛を肯定し、成功を非難しているのは視覚的にわかるようになっている。
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