「小品で心温まる佳作」E.T. Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
小品で心温まる佳作
感想
1982年の初鑑賞以来、機会がある事に十回以上は
鑑賞している作品である。
久しぶりにあらためて鑑賞する。
物語の導入は不可思議なサスペンス仕立てになっており、謎の宇宙人の正体が判るまでの話の創り込みは監督のセンスが光り脚本と共に秀逸な出来栄えである。
監督のセンスとは何か。
本作は全編を通して子供の視点を中心に描かれている。「フェイブルマンズ」「未知との遭遇」を観た方はお分かりになると思うが、本作を含め毎作品ごとに家庭環境的には必ずしも上手く行っていない家族の姿が描かれている。現実の監督の子供時代は両親が離婚するなど複雑で子供には理解しにくい家庭環境があり、本人は多感で繊細な性格。さらに人種差別的な境遇も少なからずあり、身近には常に映像制作機材が整っている状況で、且つ人間性に基づく客観的視点から当時の人間関係全体の中での自分の立ち位置を理解分析した上でそこからイメージする、所謂完結したストーリーをひとつずつ創作して少年期より映画を自主制作する中でエピソードとして反映させてきた経緯がある。
大人には理解出来ない子供の視点や意思を物語に反映することは得意中の得意なのである。だから子役との意思疎通もスムーズになる。この映画に出演しているヘンリー・トーマスやドリュー・バリモアは主要キャストでのほぼ映画初出演にも関わらず実に子供らしく、生き生きとした自然な演技をしているのが映像を観てもよく判る。
映画は子供達が異星人との意思疎通を超えたその先にある友情関係にまでに発展し、最後はかけがえのない信頼を築き上げ、双方がまた元の世界に戻る事で終焉を迎える。崇高な知性と心理を持ち合わせる異星人と純粋無垢な人間の子供だから成せる話なのだ。エイリアンやプレデターのような暴力的で狡猾な異星人ではこうは行かない。
閑静な新興住宅地で起きた事件とも呼べる事態の中での驚きの体験と異世界の知性との間に芽生える友情と絆。友の死の悲しみと迫り来る理解出来ない大人の恐怖。生きているという事の素晴らしさ、異星人、人類それぞれが持つ生命への尊厳と敬意が人間性を以って描かれ、そこに大人の事情は介在する事が出来ない、子供達自身の冒険と約束を果たす事に全力を尽くす事で獲得する人間的成長をファンタジーとして描いている佳作である。
音楽はジョン・ウィリアムズ。
テーマ曲を含め楽曲が素晴らしい。エンドタイトルはいつも聴くとストラビンスキーの火の鳥が想起されインスパイアされていると感じる。
1982年8月
カリフォルニア州ストックトン 初鑑賞
1982年12月 丸の内ピカデリー 国内初鑑賞
⭐️5
Moi様
お邪魔します。
もう10回以上も観られてるんですね!
私は同じ作品をできるだけ観ないようにしているのですが、今作は少し前に「ちゃんと感動できるかな?」とドキドキしながら2回目を観ました。公開時から数10年ぶりでしたが、とてもよかったです。スピルバーグ監督の子供目線がいいんでしょうね。
赤ヒゲでした。
私のレビューに共感いただきまして、有難うございます。
(一言お礼を申したかっただけで、繰り返しのコメントはいたしませんし、ご返答のお心遣い無くても構いません)
Moiさんが仰る通り、子供の視点、そして必ずしも順調とはいえない家庭環境は、特に本作では、見逃せないベースだと思います。
だからこそ、純粋な宇宙人との交流が、作品として成立しうるとも思います。
これからも、駄文ばかりのレビューばかりと思いますが、どうぞよろしくお願いします。