「人間になることを念願するロボット」アンドリューNDR114 summer eyesさんの映画レビュー(感想・評価)
人間になることを念願するロボット
人間の本質は不完全性である。善から悪まで無限の幅を持ち、不安定で流動的でアモルフであり有限である。それに対してロボットは限定的でありその限定性のなかで完結しており安定している。
人間は不完全なものであるから完全性を求めるが完全な存在であるロボットが不完全な人間になることを求めるのがこの映画だ。
つまりこの映画では「人間らしさ」という概念が最上位に置かれている。そしてその「人間らしさ」はユーモアや愛や思いやりといった肯定的なものだけで満たされている。実際には「人間らしさ」という概念は不完全性であり、支配欲や攻撃性、残虐性も含むものなのに。
人間らしさを求めるこのロボットは執拗に愛を求めストーカーよろしく最初に仕えた家族の孫娘につきまとう。作者たちの意図に反して名優ロビン・ウィリアムズはそういう不気味さを図らずも体現している。
この映画が作られた20世紀の終盤(1999年)は人類がまだ人間という概念に希望しか見ることを欲しなかった時代でもある。
この作品に登場する人体を模した人工的な腕や臓器などのビジュアルはとてもよくできていて、不完全な人間という概念を超えるものとしてむしろそこにこそ希望があると感じた。
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