アントニオ・ダス・モルテスのレビュー・感想・評価
全1件を表示
ブラジル産のくるった神話的カルト・ムーヴィー。私にはチンプンカンプンでした(笑)
♪またどう~? またどう~? 時間がで~ええう~うう!(うろおぼえ)
新宿Kシネマの『奇想天外映画祭3』にて視聴。
まあ、そりゃ圧倒はされるけど、これだけ何やってるかよくわからない映画を、しょうじき自分は褒める気にはならないなあ。ホドロフスキーの『エル・トポ』なんかと比べても、圧倒的にナラティヴがわかりにくいうえに、監督の伝えたいことが僕には皆目つかめない。
映画的な力を感じる? 悪いけど僕は感じなかったです(笑)。
ブラジルの神話とか歴史をもう少し知っていたら、わかるもんなのだろうか?
たぶん、ダミアノ・ダミアーニの『群盗荒野を裂く』とか、ジュリオ・ペトローニの『復讐無頼・狼たちの荒野』とかのメキシコ革命ものに近しいような背景があるんだろうなと勝手に思いながら観てはいたのだが。
ブラジルの山岳地帯に「聖女」を中心とする聖ゲオルギウス信仰のカルト集団がいて、「カンガセイロ」と呼ばれる(?)男が率いている。これをよく思わないコロネルが、殺し屋アントニオ・ダス・モルテスを雇って送り込む。アントニオはリーダーと決闘のうえこれを倒すが、聖女との語らいと集団の民との交流で、集団の側に立場を変えることに。怒った盲目のコロネルは、部下をカルト集団討伐に向かわせるが、一方で妻と間男(警察署長?)の浮気を知って激昂する。妻は自らの手で浮気相手をめった刺しにして、死体を荒野のただ中に男ふたりと捨てに行くが、コロネルの部下と死体の上で転がり回りながら情を交わす……。同じころ、カルト集団の民を虐殺したコロネルの手下たちだったが、その後アントニオと相棒のプロフェッサーの手で返り討ちにされる。コロネルと妻も殺したアントニオは、新たな場所を求めて旅立つのだった。
概略こんな話だったような気がするけど、しょうじきよくわかりません。
とにかく、話の接ぎ穂をわざとはぐらかしてあるうえ、時系列を敢えていじってあるので、誰がなんのために何をやっているのか、わからないように苦労してつくってあるようす。
僕はここ数年で最も感動した映画が『神々のたそがれ』ってくらいの人間で、筋が追いにくいからといって否定するタイプではまったくないのだが、このわかりにくさは、観客に対して不誠実だと思うし、作品にとってプラスに働いているようにも全く思わない。
あと、ひとシーンがとにかく長い。
口と口でゆーとぴあみたいに長いハンカチをくわえ合って決闘するシーンは、茶番感のある出オチとしてはとても楽しいのだが、10周くらいしたあたりでいい加減飽き飽きしてしまった。延々ワンフレーズの繰り返しがつづくブラジルの民族音楽にも胸やけがする。
女が男を刺すバイオレンス・シーンも、死体+女1+男2でごろごろしまくるエロティックなシーンも、始まったときは鮮烈だったのだが、さすがに適正な時間を超えてあまりに引っぱりすぎ。最後は飽きてうんざりしてしまう。
赤を鮮烈に用いたカラーセッティング自体は最高なのだが、画面のつくりは総じて単調でリズムを欠く。たとえ長尺でも一秒の無駄も感じさせないヴィスコンティやタルコフスキーとちがって、僕はこの映画を観るのがひたすら退屈だった。
湖畔の老木にはまりこむようにもたれる聖女(高山寺の明恵上人みたい)とか、最後にコロネルを刺し殺す黒人の少年(聖ゲオルギウスの竜退治ですね)とか、絵になるシーンもたくさんあるにはあるんだが。
せっかくの良い映画なのに、わかってあげられなくてすみません。
もしかすると、ミニマルミュージックとか苦にせず聴くような人は、この繰り返しと長回しにも耐性があるのかも。
全1件を表示