「幼心に刻まれた名シーンの衝撃!」アンタッチャブル しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
幼心に刻まれた名シーンの衝撃!
パラマウント映画創立75周年記念作品。
サンテレビ「シネマスタジアム」で4回目の鑑賞。
本作を初めて観たのは、確か小学校低学年の頃でした。
幼心に受けた衝撃は今でも忘れられません。
当時、特撮好きが講じて戦隊モノや仮面ライダー、ウルトラマンを欠かさず観ていました。正義の味方が悪を倒す。死ぬのは常に悪の方。それが私にとっての揺るがぬ常識でした。
ところが本作を観て、見事覆されたのでした。
エリオット・ネスを中心とした特捜チームが、力を合わせてアル・カポネを倒す。純粋にそう信じていましたが、アル・カポネの方が一枚上手であり、仲間が殺されていく…
「正義の味方やのに死ぬん?」と悲しくなりました。
ショーン・コネリー演じるマローンまで殺害されたのはかなりショックでした。マシンガンで蜂の巣にされながらも執念でネスにメッセージを託した姿に涙が溢れました。
すでにショーン・コネリーがスターであることは知っていましたから、配役的に死ぬはずが無いと盲目的に思っていたこともあり、余計に衝撃がデカかったです。
ネスの家族まで狙われ、正義の味方のはずの警察には裏切者がいるし、陪審員や裁判長まで買収されていると云う始末。カポネを捕まえるどころか、逆に追い詰められていく…
ネスは仲間の復讐のために、時には法を逸脱しながらカポネを逮捕するための決め手を得ようと奮闘。結果、ついに勝利を勝ち取ることになるのですが、清々しく感じながらもモヤモヤしたものを心に残されたなぁ、と思いました。
このような展開の物語を観たのは初めてだったので、幼心に価値観を揺さぶられたと言うか、正義が飲み込まれてしまう危機があり、厳しい現実や本当の社会の姿と云ったものをまざまざと見せつけられたように感じました。
もうひとつ印象的だったのは、駅の階段で繰り広げられた銃撃戦。カポネの経理係はいつ来るのか?―細かなカット割りでハラハラを助長する演出が巧みだし、乳母車を押す母親の存在感が緊迫に拍車を掛ける…。「何しとんねん、早よどかな危ないで!」ともどかしくなりながらジリジリしていると、入口に如何にもな男が。そこからの目眩くような銃撃戦…
パノラミックに展開されるシーンをスローで描くことでドキドキが加速され、落ちていく乳母車の行方に一喜一憂し、思わず手に汗握り夢中になってテレビ画面を凝視していたことを、その時味わった途轍も無い興奮と共に鮮明に記憶しています。
本作を観て感じた衝撃は、小さかった私の心に深く刻まれました。自然、お気に入りの映画のひとつとなり、機会があれば観返したくなる作品となりました。
今回改めて鑑賞して―
ロバート・デ・ニーロの怪演が、改めてすごいクォリティーだなと思いました。カポネの笑顔の下に隠された残酷性を見事表現。表情から仕草まで、完璧に計算し尽くされた人物造形が素晴らしく、役づくりの繊細さに脱帽でした。
「ダークナイト」にも通ずるテーマに心揺さぶられました。小が大に立ち向かうと云う胸熱のストーリーが、実話ベースながらエンターテインメントとして抜群に面白く、どんなことがあろうと不屈の精神で巨悪と対決するネスたちの姿がカッコ良過ぎて、さらに本作を好きになりました。
元となったテレビシリーズは、そんな私が幼い頃放映されていて、全く内容は覚えていませんが、4つ上の兄は夢中で見てました。
この映画の登場人物はネスとカポネだけが実在の人物で、ほかは皆架空の人物。
カポネが脱税で起訴されたのも事実です。
それらをネタによく作り上げたストーリーですよね。