暗黒の恐怖のレビュー・感想・評価
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暗黒の恐怖
ニューオリンズの波止場近くで、闇賭博に絡んだ殺人事件が起きる。が、しかし、殺された犠牲者は港から上陸した外国人であり、しかもペストを発症していた事から、通常の犯罪捜査に加えて、犯人グループ=感染者の一刻を争う逮捕=隔離が必要になるというこれぞ悪夢の中の悪夢とも呼ぶべき最悪な状況設定のフィルム・ノワールだ。
・・・と言うことで、内心かなり期待していたのですがハッキリ言って駄目でした。(泣)
一刻を争う筈のサスペンスの醸成がもたもたしていて、一向に盛り上がらず、軍服のような制服に身を包んだウィドマークの大熱演もほとんど空回りしてしまう。ポール・ダグラス演じる警察署長と、ウィドマーク演じる衛生官との対立、駆け引きも全く盛り上がらず、面白味がない。バーバラ・ベル・ゲデスがウィドマーク夫人役で出てくるが、本筋には一切関わらず、御付き合い程度であり、家庭での二人の会話のシーンが、却って本筋の緊張感を削いでしまっている。
第2、第3の感染者が、近辺に出てくるものの、時間経過もハッキリせず、タイムリミットもない。
ペストに感染した犯人グループの一人が倒れたところで、残された犯人が、それを逆手に取って利用したりとか、病気のせいで更に狂気に走ると言ったようなことは起こらない。と言って、社会派の映画作家として何かを鋭く訴え掛けている訳でも無い。
唯一の収穫は、本作品が映画デビューとなったジャック・パランスの凶悪な表情と、にも拘らずどこか人間味のある存在感だけか?
それと名撮影監督ジョー・マクドナルドの功績は充分評価出来る。フィルム・ノワールならではの光と影の演出、驚くべき3次元的な移動撮影、表情豊かに捉えられた港町の風情とそこに住む人々のリアルな生活感が良く出ていたと思う。
そもそもエリア・カザンという監督の設定に無理が有ったのか?監督としてのキャリアの初期に、本作を含めた数本のノワールがある。その中に以外な佳作を発見したりしたかったのだが残念だった。しかし、スタッフとキャストがこんなに良くて何でこれ程盛り上がらなかったのだろうか?
肺ペスト
ウィドマークとパランスのくせ顔対決! ペスト防疫をめぐる巨匠カザンの傑作タイム・リミット捜査劇
コロナで世界中がてんやわんやのこの時期、シネマヴェーラが「恐ろしい映画」の特集上映に敢えてぶっこんできたのが、ペストのアウトブレイクを題材にとる『暗黒の恐怖』。
いやあ、マジいいセンスしてるわ(笑)。
しかも、観てびっくり。これ、たいした傑作じゃないか!
大変な拾い物に、大興奮の巻。
エリア・カザンの映画は、『エデンの東』『波止場』他5、6本は観てるけど、出来栄えはいずれも文句無しに素晴らしいとはいえ、やはり基本シリアスで重厚なイメージが強かった。
しょうじき、こんな純粋に娯楽作としてかっこよくて、びしっと引き締まった傑作クライム・ムーヴィ
ーを撮ってるとは思いもせず、あらためてその才能に感服した次第。
波止場で発見された密航者の射殺体。ところが検視官は被害者がペストに感染していることに気づく。濃厚接触者である犯人一味を48時間以内に見つけないと、街にパンデミックが起きてしまう。
急遽休暇から呼び戻された衛生局の医務官クリント(リチャード・ウィドマーク)は、まさに今がアウトブレイクの瀬戸際だと判断し、お偉方の集まる会議で、事態の切迫性について必死の演説をぶつ。結果として、彼もまた捜査に携わることになるが、相棒役のベテラン刑事ウォーレン(ポール・ダグラス)とはなかなか反りが合わず……。
本作は、まさに「今観るべき」たぐいの疫病水際対策映画である。
とにかく、リチャード・ウィドマークが最高に熱い! かっこいい!
いや、別に我が国の政治家や役所に文句をつけたいわけでは全然ないんだけど(どうしても叩かれがちだが、それはそれで皆さん必死にやっておられるはず)、やはり「防疫の水際」では、これくらいの熱意と必死さと突破力と行動力をガツッと見せてくれると、守られる側の下々も「俺たちも一緒に頑張ろう」ってな気分になるもんだ。実際、最初はドン引きしてた市のお偉方や警察高官が、ウィドマークの熱意にいつしかほだされて、だんだんやる気を出してく流れは、「プロジェクトX」並みに燃える展開だ。
家での眠そうで、お金がなくて、奥さんにやり込められてる家庭人ウィドマークと、政治家や警察相手にマシンガントークで「いまここにある危機」をわからせようとする勇猛果敢なウィドマーク。この手のくせ顔でスターダムにのし上がった俳優だけあって、その演技力や存在感はほんと抜群である。
本作は防疫お仕事映画であると同時に、捜査物のバディ・ムーヴィーでもある。
若きウィドマークと、老獪な刑事のコンビが、猛烈に素晴らしい。
最初ぶつかりがちだった(もっぱらウィドマークがつっかかるのだが)二人が、お互いを分かり合い、認め合い、協力し合う流れは、この手のバディものが好きな人にとってはもうこたえられない。
会話のリズムがいいんだよね。丁々発止としていて、くすぐりがきいてる。
尋問シーンの「シャラップ」とか、ポール・ダグラス台詞回りが超絶うまいよなあ。
ウィドマークも、記者対応を誤って、刑事が黙ってケツを持ってくれたことに気づいたときの、さりげない後悔と感謝の演技が光っていた。
全体の捜査過程も、緊張と緩和のバランスがいいし、情報の開示がうまいので、話がよく流れている。演出の生き生きとしたリズム感は、さすがカザンとしかいいようがない。
悪党一味が、町中の警官がなぜ自分たちを血眼になって捕まえようとしているのか、どうしても理由がわからず、逆に疑心暗鬼に陥って仲間割れ状態になるというのも、面白い設定だと思う。
この悪党サイドの話が、捜査側以上にみっちり描かれているのも、本作の特徴だ。
やはり賞賛されるべきは、追われる側の地元ギャングのボスを演じたジャック・パランスだろう。
しょうじき、ウィドマークに負けないくらい素晴らしい。
なんとこの人、これがデビュー作。若いころほど顔にクセが強い感じがするけど、あのゾッドみたいな顔、従軍して戦傷を負って、整形手術を受けた結果なんだってね。もともとボクサーだったらしいけど。なんでも、ウィドマークが悪役から善玉に転じて、ウィドマークよりも怖い風貌の男を犯人役にしなければということで抜擢されたとか(笑)。まさに「くせ顔対決」である。
個人的には、『JoJo』でポルナレフと石仮面の男が戦っているかのような気分にさせられた。
パランスは最初から純度100%のパランスだった。
とてもこれがデビューとは思えないくらいの風格。
カリスマはあるんだけど、病的に猜疑心が強く、どこかのバランスが崩れた凶悪なソシオパス。
(首が折れてます!のシーンは、マジで爆笑)
最終盤には、いつ終わるのかと思うくらいの長いサツとの追っかけがあって、もはや完全に主役を食う勢いだ。ペストにかかった手下が弱ってくのを後目に、ひとりピンシャンしたまま、圧倒的な粘りを見せ、ひたすら逃げ続けるパランスの生命力には、悪漢ながら素直に感心してしまう。
こんな防疫措置で本当に「バブル」が成立するのか、とか、途中で出てこなくなった恋人や母親はちゃんと網にかけられてるのか、とか、そこまで予防接種は万能なのか、とか、細部では気になるところもたくさんある。ただ、今のコロナもそうだけど、あまり細かいことをいっても詮無い話だ。むしろ、得体の知れないアウトブレイク阻止に向けての闘いを、うまく「人型の追跡対象」に集約した製作サイドのアイディアをほめるべきだろう。
観られて本当によかった。おすすめです。
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