劇場公開日 2016年10月8日

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「独立の高揚感の中で撮られた名作中の名作では…」アルジェの戦い KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0独立の高揚感の中で撮られた名作中の名作では…

2021年12月1日
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鑑賞方法:DVD/BD

多分3回目の鑑賞だが、
私の理解を遙かに凌駕している。
一体どのように撮影したのか、
あたかもアルジェの市民全員が
キャストであるかのような映像が続く。
まだまだ独立から日も浅く、
当時の高揚感が溢れている中での
市民総出の撮影だったのではないだろうか。

この映画、フランス資本ではなく
イタリアとアルジェリア資本の作品なのに
台詞がフランス語とアラビア語であること
も、興行の観点から
何かと英語ベースで製作されることの多い
現代とは異なるし、
FLN側にも悲人道的な戦いがあったこと
からも逃げない描写も含め、
それらもドキュメンタリータッチとの
評判の要素なのだろうが、
充分にドラマ性も感じた。

この作品ではアルジェリア独立に関して
改めて色々なことを知ることが出来る。
まず驚かされたのがギロチン刑だったが、
調べてみるとフランスでも
1981年まで採用されていたとのことで
フランスの支配地だったアルジェリアでは
当然だったと納得した。
また、FLNとフランス駐留軍と戦いでは、
テロとその鎮圧の争いだけでは無く、
ゼネストでの国連への正当性宣伝争いや、
国連や住民への自らが味方であるとの
アピール合戦もあったことが描かれた。
そして、
爆弾テロは現代の中東における悲劇を、
また、楽勝のはずだとの将軍の発言にある
山岳部の戦いは
アメリカ映画「名誉と栄光のためでなく」を
思い出させた。

この作品の中の主役達がいなくなり
鎮圧されたかに見えた独立運動だったが、
最終的に独立を勝ち取る
市民・国民蜂起のラストシーンも
高揚感が溢れ感動的だ。

ドキュメンタリータッチへの評価以前に、
構成の上手さと驚くべき映像で描かれた
名作中の名作と再認識することが出来た。

KENZO一級建築士事務所