「ジェニーの会話からわかること」ある愛の詩 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
ジェニーの会話からわかること
総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:80点 )
ありがちなお約束的な物語である。しかし純愛である。ジェニーの勝気でいて冴えた速い会話が魅力。
時代はまだハーバード大学が男子校で、ハーバード大学の女子部とも言えるラドクリフ大学と合併して共学化する前の学生運動が盛んだった頃。貧乏な女子学生ジェニーが学費の足しにと図書館で働いている時に、お金持ちの御曹司オリバーと出会うところから始まる。
ジェニーは強くて頭の回転が速い。自分を誘わないから有名私立高校に行ったような金持ち(preppy)は馬鹿だと言い切る。
Jennifer: I'm smart and poor.
Oliver: What makes you so smart?
Jennifer: I wouldn't go for coffee with you.
Oliver: Yeah well I wouldn't ask you.
Jennifer: Well, that's what makes you stupid.
こんな会話の返しが劇中に散りばめられている。他にも試合で顔に怪我をしたオリバーを見て、怪我をしてお気の毒とも大丈夫かとも言わない代わりに、相手をもっとやっつけたのかと聞く。ジェニーの言葉はオリバーの想定の上を行く。
Jennifer: What happened to you? You look terrible.
Oliver: I'm injured.
Jennifer: Did you at least make the other guy look worse?
ジェニーは家の格の違いからオリバーに言われる前に別れを切り出す。しかしオリバーが本気であることを悟ると、苦労して掴んだ憧れていたパリ留学の道を自分がその世界で一流になるには才能不足であることを認識していてあっさりと捨て、彼を支える道を選ぶ。夢を見るのではなく現実を見て判断をするだけの明晰さがある。
しかしそんな彼女が残り少ない余命の中でオリバーと貴重な時を過ごすスケート場で、次はどこに行くかと聞かれ、ただ病院へとだけ答える。ああ、もうジェニーには何か気のきいたことを言える力が残っていないんだとわかる。
Jennifer: Could we afford a taxi?
Oliver: Sure. Where do you want to go?
Jennifer: The hospital.
雪の中を支えあいながら歩く2人。フランシス・レイの旋律が切なく美しい。
ちなみにオリバーは父親のことをDaddyとは言わず、SirとかFatherと格式ばった呼び方をする。ジェニーは父親をフィルと名前で呼ぶ。これでも家庭環境の違いがわかる。
そして有名な科白、「愛とは決して後悔しないこと」はLove means never having to say you're sorryである。