「家族愛にジーンときた」アラバマ物語 ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
家族愛にジーンときた
「おもいでの夏」のロバート・マリガンがこのような社会派映画を撮っていたとは意外な感じがする。
舞台は1932年、この映画は1962年製作、いま(2021年)でも人種問題が起こっている現状は悲しい。
人種問題が主たるテーマになっているものの、一部サスペンスタッチの部分と家族愛の部分で、映画全体の出来をエンターテイメントとしてもすばらしい作品にしている。個人的には父と娘の交流(会話が面白い)のほうがすごく気に入っているが。
敢えて気になった点をあげれば(映画の出来を損なう程ではない)
・被告の黒人青年が拘置所から脱走したこと・・・主人公が上訴すると言っていたのになぜ?主人を裏切るような行為じゃない?彼の性格から脱走するのは不自然、脱走が成功する訳ないのになぜ?もしかして、一種の自殺行為だったのか(撃たれることを想定して)?
・最後のほうで子供が襲われるが、暗くて誰が何をしているのかよくわからない。
・娘の回想であるが、何年後の回想なのか、今の彼女が何をしているのか(父のように弁護士になったのか)、わからない。
・子供たちを救った男を裁判にかけなくてよいのか?真実を追求する主人公の性格から矛盾するようにも思える。ただ、実際に警官の言う通りに従ったのか否かはわからないエンディングであるが。
<印象に残ったセリフ>
ー裁判に負けた後、おばさんが兄にかけた言葉ー
「世の中にはイヤな仕事をしなきゃならない人がいるの、お父様がそうよ」
ーラストシーン、娘が父に言ったセリフ(子供たちを救った男を逮捕する必要ある?という意味、原題の真意がわかる)ー
「無害なツグミを撃つことと同じこととでしょ?」
気になる点一番目は、観た方皆が思うことだと思います。逃げられない殺される可能性大、お考えの通りかも。白人至上主義社会への絶望ですよね。②はあの原告の親が子供を襲いました。④は殺されそうなところを救ったのですから、襲った男を裁判にかけるべき。(生死わかりませんが)
この作品の“ふわふわした感覚”は、子どもの頃の遠い記憶を大人になったいま、ふと思い出している世界だからだと思いました。
それは子ども心に強烈な体験だったり、なぜか覚えている大人たちの交わしていた言葉だったり、そしてそれがどこまで現実だったのか最早曖昧になってきているけれど大切な思い出だったり。