「退廃と享楽の日々」甘い生活 てらちとさんの映画レビュー(感想・評価)
退廃と享楽の日々
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ローマはこんなに夜の社交が華やかだったのか。数年前に訪れたが、埃っぽい、遺跡だらけの垢抜けない都市だなと思っていたが、今でもこんな社交界はあるのだろうか?
マルチェロはなまじ容貌と要領がいいために、出身ではないが、上流社会の中でもうまくやっている。しかし本当の志は違っていて、心から信頼できる友、規範となるスタイナーを目指して、一度は文学の道へ行こうとする。その間に、様々な心の危機が訪れる。
父を見て老いという哀しみ、婚約者の愛は束縛ばかり、民衆は扇動されて盲目的で愚か、周りにいる金持ち女性は一夜限り、生き生きしたアメリカ女優に惹かれても彼女はろくでなし男優から離れられない、金持ち達との夜ごとのばかげたパーティー。甘い生活を堪能しながらも、マルチェロは本当はこれではいけないと思っていただろう。
しかし、スタイナーという金持ち連中とは正反対の、マルチェロのお手本としたい幸せそうな人物が、実は人生に絶望して自殺をする事で、マルチェロは本当に絶望する。
マルチェロは甘い生活から抜け出そうとして、もう、抜け出せなくなっていく。
しかし、どうしてこの映画に出てくる金持ちは皆、不満そうな、不幸そうな様子なのだろう。唯一、最後にパーティーをお開きにした館の主人だけは、事業が順調なのか、てきぱきとこんなバカげた生活とは無縁のようだ。
オシャレで粋な大人の甘い生活が描かれてるんだろうかと思ったら、絶望と享楽から抜け出せず、才能をつぶした哀しい男の話だった。人生はお金より大事なものが必要なんだな。
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