「人の話を聞かず思いつきで行動するトップは、昔なら命取りだった」アパッチ砦 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
人の話を聞かず思いつきで行動するトップは、昔なら命取りだった
自分が生まれた翌年の作品である。当然、リバイバルも含めスクリーンでは観ていない。
1876年のカーター中佐率いる第七騎兵隊の全滅がモデルで、大筋は次のようになる。
○功名を焦り現場の意見を聞かない新任上司
○新任上司の娘と部下の息子が恋に落ちるが認められない
○新任上司と衝突して解任された主人公が戻ってくる
こうしてみると、ストーリーのポイントが同じような映画が現在まで何本もあった。
この「アパッチ砦」では功を焦る愚かな司令官の無謀な作戦によって、軍の壊滅という取り返しのつかない事態を招く。
失策は己の命ばかりか、何十、何百という部下の命を無駄にする。下の者から「もう、やめましょう」とは言えない時代だ。そういう時代があったことを肝に銘じた上で、今の平和をありがたく思う。
信望を得ることの難しさ、撤退する勇気の大切さをテーマにした今作、このあと作られた「黄色いリボン」「リオ・グランデの砦」に比べ、遊びが少なくシリアスな作りになっている。
主役のジョン・ウェインの役どころが、上官に押さえつけられる小隊長という立場で、指揮官を演じたほかの2本と設定が大きく異なる。
西部劇としての見せ場は騎兵隊の幌馬車がアパッチの襲撃から逃れるシーン。
疾走する幌馬車の幌が風を巻き込んですっかり剥がれ、丸い骨だけが残った状態になるがまだ逃げる。スピードは限界を超え、蛇行する馬車に転倒するのではないか、あるいは車輪が外れるのではないかとハラハラする。と同時に、特撮無しの実写の迫力に唸らせられる。
ドラマでは新任のサースデイ中佐の娘フィラデルフィアと、マイケル・オローク中尉の恋の行方が気になるところ。シャーリー・テンプルが小っちゃくて利口そうな瞳がくりくりして可愛らしい。
オローク中尉の父、古参のオローク軍曹は息子より階級が下になったものの、やはり息子が気掛かりで何かと画策する親心を見せる。
同じ軍曹のマルケヒー。演じるヴィクター・マクラグレンが騎兵隊3部作すべてで観る者を和ませる大きな存在になる。
モノクロでも大地と雲の美しさを感じる。