あの子を探してのレビュー・感想・評価
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今までの監督作品とは全く違うセミドキュメンタリーの趣
『あの子を探して』 (1999/中国/106分)
26年ぶりの鑑賞。
ぼんやりと過疎の村での若い女性教師と子どもたちのハートウォーミング映画という記憶でしたが、然にあらず、かなり社会派の作品だったと再認識。
舞台は高度経済成長前夜、90年代の中国の過疎農村。
チョーク1本も満足に購入できない貧を極めた小学校に母親の看病のため一ヶ月休職するベテラン教員の代理教員として雇われた13歳の少女とコーラさえも飲んだことのない貧困にあえぐ生徒たち。中学さえも卒業していない少女はろくに授業もできず、科目によっては生徒の方が優秀。約束された代理教員の給与も支払われず、村長からは「学校経営が困難なため、これ以上生徒の人数が減ったら給与は支払わない」と言われた最中、クラス一腕白な生徒が家計を助けるため都会に出稼ぎ、少女は給与のために他の生徒たちと思案しながら都会へのバス代稼ぎに奮闘。なんとか都会に到着するが、あてもなく途方に暮れる。それでも凄まじいバイタリティを発揮して、TV番組内での公開捜査を実現、無事村に連れかえるというお話。
『二十四の瞳』や『熱中時代』『3年B組金八先生』のような熱血教員映画と(勝手に)記憶しておりましたが、原題「一个都不能少=一人も欠かさない」のように、教師と生徒の心の交流というよりも、わずかばかりの給与のために尽力せざるを得ない少女、当時の中国の格差社会を描いた作品。
とは言え、お金のための捜索から徐々に教師としての責務、生徒たちへの愛情の発露がきちんと描かれています。
監督のスケジュールの都合上、ロケ地も急遽変更、そのためキャストもほとんどが現地の一般人が採用されており、今までの監督作品とは全く違うセミドキュメンタリーの趣でありますが、21世紀間近になって都会が発展を遂げても、まだ農村では満足に教育を受けられない子どもたちが多数存在することを伝えるには、よりインパクトがありましたね。
公開当時よりも教育環境が良くなっていることを願います。
女性の魅力を引き出す、チャンイーモウの本領が発揮された作品
主人公の女の子の魅力を最大限に引き出しているのはチャンイーモウの本領発揮と言えるそれで、さすがの一言。常にムキになって課題に立ち向かう頑固な性格がガッチリめに描かれている。
映像美もまたチャンイーモウならでは。気が強くひたむきで生意気な主人公が必死で全力疾走する姿と、90年代とはとても思えないような中国の田舎の風景、というマッチングが印象的に何度も現れたが、そのどれもが同様に美しかった。
ただ、純朴さを描くが故にストーリーがシンプル(悪く言えば陳腐)であり、かつ「初恋のきた道」や「サンザシ」のような強力なスペクタクルも無く、動画というよりは美しいシーンをいくつか並べるためのストーリーのように感じてしまった。
主人公の必死さの動機が、金のためから生徒のために移り変わっていく状況説明が、テレビ番組側の美談に仕立て上げたいという意図にきっかけを得ていることもあって、なんか棚ぼたで得たものに浮かれてるようにも捉えられてしまい、ラストでいまひとつ素直に感動できなかった。
それでも、子供たちの笑顔や扱いづらさ、それに立ち向かう主人公の力強い姿が描ききれているだけでも十分良作だと思わせてくれるのが、チャンイーモウならではの演出力なのかもしれない。
【”貧しき農村の代用教員に一カ月だけなった女の子の責任感の強さとTVの前で流した涙・・。”チャン・イーモウ監督が当時の中国の学校事情をベースに描いたヒューマンドラマ。】
ー 農村の小学校でガオ先生の代用教員となった13歳の少女ミンジは、退学する生徒がいなければもらえる褒賞金目当てに、ひたすら生徒の監視を続けていた。
けれども、生徒達はミンジ先生の言う事をナカナカ聞かない。
そんなある日、クラスの腕白少年・ホエクーが、出稼ぎに出た町で迷子になってしまう。
ミンジはホエクーを捜しに町へ行く。ー
◆感想
・登場する貧しき少年少女達が何だかんだ言いながら、ミンジ先生の言う事を段々と聞いて行く姿が愛おしい。
・クラスの腕白少年・ホエクーがある日、学校に居ない事に気付いたミンジが皆に聞くと、
”町に出稼ぎに行った。”と言う答え。
彼の家に行くと、寝込んだ母が”借金が沢山あるから・・”と答える。
・何とか町に行ったミンジ。けれども、町の人達は冷たい。TV局に行けばよい、と教えられ行くが係のおばさんは局長の許しが無いと駄目!とツレナイ返事。
- 村と違って、町には沢山人が居るが・・。ミンジは局長に会うために二日も待つ。客の食べ残しを食べたミンジは街路樹に寄りかかって寝てしまう。-
・事情を聞いた局長は、規則規則と行っていた係のおばさんをキツク叱り、ミンジは無事TVに出演するが、言葉が出ない。
- このシーンで、ミンジが涙を流しながら”ホエクー、何処にいるの。心配で堪らない・・。”と言うシーンは沁みる。ー
・その姿を、食堂で見たホエクーも泣き出してしまう・・。
<チャン・イーモウ監督が当時の中国の貧しい地域の教育事情をベースに描き出したヒューマンドラマ。
ミンジが必死になって、ホエクーを探す姿が切なくも、愛しく思えてしまう作品である。>
格差社会
近代化への道半ばの中国のお話。13才が小学校の代用教員、広い中国で...
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