「【仏蘭西領ベトナム、サイゴンで”青いパパイヤ”が、成熟していく様を、気品溢れる劇中曲、映像美で描き出したエロティシズムが仄かに漂う作品。】」青いパパイヤの香り NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【仏蘭西領ベトナム、サイゴンで”青いパパイヤ”が、成熟していく様を、気品溢れる劇中曲、映像美で描き出したエロティシズムが仄かに漂う作品。】
ー 1951年サイゴン。裕福な一家に、10歳の少女ムイが使用人として雇われる。その家には頻繁に家を留守にする父、そのことを祖母に責められる母、2人の息子、孫のトーを失い引き籠る祖母がいた。
そんな中、年配女中、ティーに教わりながら家事をこなすムイは、ある晩、長男の友人クェンに恋心を抱き…。ー
◆感想
ー ベトナムは、今でも特に北部では、フランス領であった気配が、特に食文化で感じられる国である。ー
・今作での”青いパパイヤ”とは、若くしてサイゴンの資産家の奉公人として雇われたムイの事であろう。
そして、彼女は資産家とは言え、若くして娘トーを失った、放蕩息子の姿や、その息子の嫁を責める祖母の姿、後継ぎになる筈の悪戯好きの息子二人の姿を見ながら、先輩女中に、料理の仕方などを教え込まれて行く。
ー 前半と、後半”青いパパイヤ”を使ったサラダが描かれる。
”残った実の部分は捨てても良いよ”と言われながらもムイは、その種を愛おし気に触るのである。
因みに、日本人にとってパパイヤとは、果汁を飲むモノであるというのが一般的であるが、今作で描かれているように、若いパパイヤの実を千切りにして、そこに文旦のような、タンゴリン系ではない柑橘を塗し、熱した油を適量振りかけたサラダは実に美味いモノである。ー
・今作は、ムイが奉公した裕福な家が抱える哀しさを淡々としたトーンで描いて行く。
ー 気品高い、劇中に流れる東洋風味溢れる管弦楽がその味わいを深めている。そして、彼女がある日目にした長男が連れて来たクェンという若き青年・・。-
<そして、10年後に時は移り、ムイはクェンの家で、働いている。だが、幼い頃からのムイを見ていたクェンは・・。
今作は、静謐で気品高き、エロティシズム溢れる映画である。>