愛情物語(1955)
解説
1930年から20年間にわたり甘美な演奏で全米を風靡した音楽家エディ・デューチンを主人公とした映画で、デューチンと親交のあったレオ・カッチャーがオリジナル・ストオリイを執筆し、サム・テイラーが脚色し、「ショーボート」「悲恋の王女エリザベス」のジョージ・シドニーが監督、「野郎どもと女たち」のハリー・ストラドリングが撮影、音楽は「ピクニック」のモリス・ストロフが担当している。なお、この映画の中のピアノ演奏は名手カルメン・キャヴァレロが吹き込んでいる。主演は「長い灰色の線」のタイロン・パワー、「ピクニック」のキム・ノヴァク、新人ヴィクトリア・ショウなど。
1955年製作/アメリカ
原題または英題:Eddy Duchin Story
ストーリー
ピアニストとして身をたてるべく、エディ・デューチン(タイロン・パワー)は有名なセントラル・パーク・カジノのオーケストラの指揮者ライスマンを訪れた。かつてデューチンがパークシャの避暑地で演奏している時、ライスマンから賞賛されたからだ。しかしいくらライスマンでもすぐ就職させるわけにはいかなかった。当てがはずれてしょげかえったデューチンは、ふとグランド・ピアノが目にとまり、淋しい気持ちでピアノを弾き出す。ところがその調べを聞き入る1人の令嬢、大資産家の姪マージョリイ・オルリックス(キム・ノヴァク)が、事情を聞いて同情し、ライスマンに、オーケストラ演奏の合間にデューチンのピアノ演奏を入れてくれるように頼んだ。ライスマンは大切な客の彼女の申し入れを2つ返事で承諾する。このようなことからデューチンは楽壇に出ることができるようになり、2人の間も発展する。2人はやがて叔父夫婦の祝福を受けてめでたく結婚する。しかもデューチンの楽壇での地位は益々重くなり、愛児ピーターが生まれる。デューチンの喜びは大きかった。クリスマスの夜、演奏が終えてマージョリイが入院している病院にかけつけたデューチンは彼女が重態であることを知る。彼女はデューチンが来て間もなく息をひきとる。マージョリー亡き後の彼の落胆は悲惨だった。彼は叔父夫婦にピーターをあずけ、バンドを率いて演奏旅行に出かける。その間に第二次大戦が勃発し、デューチンは海軍に入り、亡妻を一時でもはやく忘れようと軍の演奏関係の仕事を一切断って、軍務に精励する。やがて終戦となり、ニューヨークに帰り、叔父夫婦の家を訪ねる。ピーターは既に10歳になっていた。ところが長い間、面倒を見なかっただけにピーターは彼になついてこない。その反対に英国の戦災孤児の美しい娘チキタ(ヴィクトリア・ショウ)に非常になついていた。しかし間もなく、父子の愛情は音楽を通じて温かいものが流れるようになる。デューチンは昔日の人気をとり戻したが、それと同時にチキタに対して愛情を抱きはじめる。ところがある日、デューチンはピアノの演奏中左手がしびれる。医者の診断を受けたところ白血病で余命いくばくもないと宣告をうける。デューチンはチキタとの結婚に悩んだが、しかし、チキタは結婚を承諾する。デューチンとピーターに対する深い彼女の愛情がそうさせたのだった。チキタとの結婚生活によってデューチンは幸福をとり戻す。が死期は刻々と迫って来る。彼はピーターにそのことを打ち明ける。2人はグランド・ピアノの前に坐り、ピアノを合奏する。そして死期のいよいよ近づいたことを知るデューチンは愛情と死の予想の苦しみに堪えかねて自らの命を断った。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジョージ・シドニー
- 脚色
- サミュエル・A・テイラー
- 原作
- レオ・カッチャー
- 製作
- ジェリー・ウォルド
- 撮影
- ハリー・ストラドリング
- 美術
- ウォルター・ホルシャー
- 音楽監修
- モリス・W・ストロフ
- 編集
- ジャック・オギルビー
- ビオラ・ローレンス
- 作曲
- ジョージ・ダニング
- 音楽演奏
- カルメン・キャバレロ
受賞歴
第29回 アカデミー賞(1957年)
ノミネート
原案賞 | レオ・カッチャー |
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撮影賞(カラー) | ハリー・ストラドリング |
作曲賞(ミュージカル) | モリス・W・ストロフ ジョージ・ダニング |
音響録音賞 |