アークエンジェル

劇場公開日:

アークエンジェル

解説・あらすじ

長編デビュー作「ギムリ・ホスピタル」でカルト的人気を集めたカナダの異才ガイ・マディン監督が1990年に手がけた長編第2作。第1次世界大戦末期のロシアを舞台に、ひとりの兵士を中心に繰り広げられる倒錯した愛を、モノクロ・サイレントの表現主義的技法で描きだす。

第1次世界大戦下、革命期のロシア。片足のカナダ人中尉ジョン・ボウルズは、英米が組織した革命干渉軍に参加するため、北極海に近い町アルハンゲリスクにやって来る。他界した元恋人アイリスを忘れられずにいる彼は、アイリスにそっくりなロシア人看護師ヴェロンカに出会い恋をするが、ヴェロンカにはベルギー人パイロットのフィルビンという夫がいた。

マディン監督が脚本・撮影・編集・美術も手がけ、眼帯姿の兵士役で出演。タイトルの「アークエンジェル」は舞台となるアルハンゲリスクの英語名で、「大天使」の意味も持つ。日本では1992年に劇場初公開後、2025年3月に4K版を劇場公開。

1990年製作/78分/カナダ
原題または英題:Archangel
配給:リスキット
劇場公開日:2025年3月15日

その他の公開日:1992年1月31日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

2.5悪夢をそのまま映画にしたような、記憶喪失とすれ違いの恋を描く疑似サイレント映画。

2025年3月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

20年代のサイレント映画を模した作りで、デイヴィッド・リンチやジョン・ウォーターズからの影響の色濃い実験映画を撮っていた、ガイ・マディンの長編第2作。
『ギムリ・ホスピタル』(長編第1作)の2時間ほど後に、レイトショーにて鑑賞。

病院を舞台として、ドイツ表現主義の影響の強かった『ギムリ・ホスピタル』と比べると、本作の場合は、同時期の英米で盛んに撮られていたメロドラマを模倣して作られている。
タイトルの『アークエンジェル』は、別段大天使が出てくるわけではなく、主人公のボールズが兵隊として赴任するロシアの街アルハンゲリスクの名前から採られている。

革命干渉軍に参加した兵隊が、ロシアで自分の亡くなった恋人とそっくりの看護師に出会って恋をするが、看護師の夫は記憶喪失にかかっていて……。
主要登場人物三人が、三角関係に陥りながら、いずれも記憶喪失に罹患して、だんだん何がなんだかわからなくなっていくという、奇妙な恋愛劇だ。

船で抱えていた骨壺の遺骨を、誤って船員に海に撒かれてしまう冒頭のシーンや、村に到着してすぐ、納屋で発作を起こして倒れた少年の胸を馬の毛でこすって直してやるシーンなどを観ても、この映画がまともにつくるつもりのない、奇妙で奇矯な映画であることは明らかだ。
主人公は片足の不具者だし(なんで革命干渉軍に参加できているのか)、話の一番のクライマックスが、少年の父親が、引きずり出した自分の小腸で相手をくびり殺すシーンだし(笑)。あと、ロメロの『死霊のえじき』を想起させる目つぶしシーンも出てくる。

いかにも昔の「すれ違い型の恋愛もの」のサイレント映画のような展開と大筋を備えつつ、細部はわざと歪ませたり、捻じ曲げたり、傷をつけたりして、故意に「80年代~90年代的なバッド・テイスト」をひそませてある、ということだ。
実際に観ると、筋は異様にわかりにくいし、各シーンでも何をやっているのか、何の意図で動いているのか、今ひとつよくわからないところが多い。『ギムリ・ホスピタル』同様、他人が熱病に浮かされながら観た不条理な夢を、そのままサイレント映画仕立てで観させられているような、居心地の悪い83分である。

これで、その歪ませた細部が面白かったり、サイレント映画×バッド・テイストがうまく作用していたら良いのだが、『ギムリ・ホスピタル』同様、単に冗長で退屈、難解かつ独善的な印象は変わらない。たぶんなら、何が面白いと思ってそういうことをやっているのかの、趣味性のロジックとか必然性があまり伝わってこないからだと思う。
とはいえ、アリ・アスターがこの監督が好きだというのは、『ボーはおそれている』とか観るとよくわかる気がする(笑)。

ちなみに、薬局の薬袋を模したパンフはアイディア賞!!

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じゃい