さらば夏の光のレビュー・感想・評価
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オープニングでは、まさに『さらば夏の光』だったのだが…
1時間36分。いつもなら丁度いい頃合いの上映時間のはずなのだが…
やけに長く感じた。
ヨーロッパの光と風景の中、あの鮮烈な構図のカメラワークが、どのように発揮されるのか?と期待していたのだが…
オープニングは、相変わらずカッコよく、まさに『さらば夏の光』を予感。
しかし、その後、本編で前衛性などは殆ど見られず…
カテドラルを探す旅だというのに、美しく装飾された聖堂建築も殆ど見られず…
割と凡庸なメロドラマが展開していた…
そもそも探しているカテドラルが、地味すぎ。
脚本の上では、それなりの理由はあるが、観ているコチラ側は「そんなん、知らんがな」といった台詞が一瞬あるだけ。
やはり「何故そこまで惹かれるのか?」という提示がなければ、旅それ自体の必然性も薄れ、脆弱なフィクションへ陥ってしまう。
というか、あのゴージャスな岡田茉莉子と地味なカテドラル(を探している意図と目的)を、結果リンクさせるには無理があり、破綻してる事に気付かない訳も無いだろ?と思うのだが。
岡田茉莉子の夫役の愛に関する台詞は、如何にも吉田喜重らしく面白かったが…(愛は本来、神によるもの。人間の愛はそのコピー。つまりイミテーションだから長持ちできる。とか…)
しかし、哲学的で観念的な台詞も随分と鳴りを潜めていた。
当時としては、日の丸を代表する大企業「日本航空」のPR的な映画だったこともあり、色々と忖度したか。
あるいは、日本航空から「あまり前衛的なのは、ちょっと…」と釘を刺されていたか。
ありふれたモン・サン=ミシェルも先方からのリクエストだったかもしれない。
そもそも、その日本航空から出費された製作費も限られていたらしいから、たぶんロケハンにも充分な時間はかけられず、本来の計算し尽くされた鋭利なカメラワークも難しかったのかもしれない。
岡田茉莉子じゃなかったら、だいぶキツかったと思う。
相手役の俳優もイマイチだったし。
せめてもの淡い期待として、海外ロケならではの解放感で、岡田茉莉子のフルヌードが見れるかな?なんて思ってもみたが…
全然、甘かった…
珍しく髪を下ろした腰まで伸びたロングヘアは、ちょっと良かったけどね。
ATGのやなとこ全部盛り映画
ポーランドの美しい風景がさまざまな画角から切り取られている。しかしそれは絵はがきのようなものでしかない。綺麗な夕陽です、煉瓦の街を走る電車です、憂愁を湛えた砂浜です、終わり。しかもそのほとんどがうんざりするような長回しで撮られているのだから退屈で仕方ない。そしてその緩慢な映像の上を、登場人物たちのモノローグが冷たい風のように通り過ぎていく。映像と言葉はほとんど干渉し合わない。まるでカラオケの背景映像と歌詞のようだ。物語それ自体もあんまりパッとしない浮気話だったし、そういやATGってこういうハズレ枠もいっぱいあるよな…と再認させられた。
吉田喜重作品にしてはつまらない。なので、吉田喜重作品の特徴を書くことにする。
この作品は、一方的に女を愛する男が、女を追い求め、ヨーロッパを転々とする物語である。
だが、いつもの吉田喜重の切れ味はなく、絵もいつもの吉田らしいシュールさに欠けている。
なので、ブログ原案として、今まで観た吉田喜重作品の特徴を書くとする。
・ヨーロッパ的雰囲気を醸し出した黒いサングラスの登場人物
・あえて群衆を排し静けさを漂わせた登場人物のカット
・知的なモノローグ
・どこか映画全体からヨーロッパ映画を思わせる雰囲気
・物静かで素敵でシュールな音楽
・男が一方的に女を求め、対する岡田茉莉子が知的な対応を見せる。
今のところ、思いつくのは、こんなところでしょうか^^
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